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金色に瞳が染まる時、私の従者は世界を変える  作者: 727


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第22話 積み重ねたもの

邪神イグニールの器と化した教皇レオナルドが消滅してから、一週間が経とうとしていた。


ヴィンセントの屋敷の一室。

広場での激戦、そして邪神イグニールの攻撃だったこことも影響しているのか、アリアの腹部を貫いた傷は重く、治癒魔法をかけ続けてもなお、まだ完全には塞がってはいない。不快に疼くその傷を押さえながら、アリアはベッドサイドに座り、未だ目を覚まさないシルヴァを介抱していた。


「全く、手のかかる従者なんだから」


アリアはそう悪態をつきながらも、その手は優しかった。シルヴァが真獣化から戻った後、意識を失っていた彼をこの屋敷まで運び込んだのは、ヴィンセントとグレイ、そしてアリアだった。


本当は自分が最後まで運びたかった想いがありながらも、肉体的な限界はどうしようもなく、ヴィンセントとグレイの申し出に甘んじた。


意識を失っているシルヴァの瞳をこじ開けて、金色から翠色に戻っていることを確認した時、アリアは安堵と疲労でその場で意識を失いかけた。

それほどまでに、アリアの中でも真獣化は不安でしかなかった。


静寂を破り、シルヴァがゆっくりと目を開けた。

彼の翠眼が、ベッドサイドのアリアを捉える。


「……リア」

「っ! バカ! やっと目を覚ましたのね!」


安堵からアリアは言葉を選べず、怒鳴るようにシルヴァを抱きしめた。その瞬間、腹部の傷が激しく痛み、アリアは思わず顔を顰めた。


「リア! 傷が!」


シルヴァは血相を変えてアリアを支え、自身の無事を喜ぶよりも先に彼女の傷を気遣った。


「馬鹿ね、私を心配するより、自分の心配をしなさい。あなた、一週間も眠り続けてたのよ」


アリアはそう言って、再び静かにシルヴァの背中を叩いた。


「俺は……あの時、理性を失って……お前を……」

「どうでもいいわ。あなたは私に手を出さず、無事に戻ってきた。それだけで十分よ」


アリアは涙ぐみながらも、それ以上何も語らず、二人はしばし、互いの生還を噛みしめるように温かい抱擁を重ねた。


数時間後、シルヴァはアリアにせっつかれながら準備を整え、アリアに手を引かれながら急拵えされたという大神殿前の広場へ向かっていた。


シルヴァは何故自分たちが広場へ向かうのか、わけもわからずにアリアについていく。


しかし実のところ、シルヴァが目を覚ましたその日は、教皇の消滅とイグニール降臨の騒動が収束した後、ヴィンセントが新教皇に就任し、教皇の狂気によって穢された聖王国イルミナを「神聖国ルミナス」に国名を変更することが宣言される、記念すべき日だったのだ。


広場には、大勢の民衆とヴィンセントを支持する聖騎士団、そして聖教会の上層部が集まっていた。


壇上に立ったヴィンセントは、広場の群衆に紛れるアリア達を見つけ、そのまま壇上に招く。

そしてまず、教皇としての就任を宣言すると、重々しい口調で広場に集まった民衆に語りかけた。


「我が神聖国ルミナスには、神の祝福を受けた者に救われた! この国を狂気から救い出したのは、旅の途中、このルミナスに身を寄せてくれた冒険者だ!」


「え、リア、これって――」

「黙ってちゃんと聞いてなさい、今日は思い出の日になるのだから」


アリアは優しくシルヴァに微笑む。

シルヴァは状況が掴めてなかったが、アリアに従いヴィンセントの宣言に耳を傾けた。


ヴィンセントは鑑定に必要な聖樹の芽が入った鉢植えを掲げた。聖樹の芽の中で、花は黄金色の一色に輝いていた。


「この冒険者シルヴァ・ノクティスは、獣憑きと蔑まれながらも真っ直ぐな信念を持ち、我らを救ってくれた。私は獣憑きと呼ばれる彼が、そんなものには思えず、属性鑑定を行った。この聖樹の芽の鑑定が示す真実は、彼が光属性を持つ存在であることを物語っている。すなわち、闇属性の獣憑きではなく、神獣の加護を持つ聖者(セレクタス)であることが証明されたのだ。今後、彼のことを獣憑きと言うことはこの神聖国ルミナスに対する侮辱であると判断し、断固抗議することを誓おう」


シルヴァはその発表を聞き、感極まって全身を震わせた。長年、忌み嫌われてきた獣憑きという汚名が、この日、この場で、神の祝福へと変わったのだ。


歓喜に満ちた民衆の歓声の中、シルヴァは達成感に身を震わせながら、隣で自信満々にシルヴァに対してドヤ顔を決めているアリアを、周りの目も気にせず、力強く抱きしめた。


「リア! ありがとう! お前のおかげで、俺は!」

「ば、バカ! 公衆の面前よ!」


アリアは照れから怒鳴りそうになったが、シルヴァが肩を震わせている様子に、彼がどれほどの苦難を乗り越えてきたかを思い、同じく感極まる。

アリアは怒りを引っ込め、そっと彼の背中に腕を回し、二人は温かな抱擁を重ねた。


「そして、もう一人!」


ヴィンセントは、シルヴァの隣に立つアリアに手を向けた。


「彼女は彼が獣憑きではないとただ一人主張を続け、彼の力を信じた! 七属性全てを操り、光属性を主軸とする、聖女アリア・ヴィルミリア!」


アリアは大衆向けの愛想の良い笑顔を見せて小さく手を振った。

彼女の公的な地位もまた、この日で揺るぎないものとなった。

ヴィンセントは、壇上で静かに微笑み、二人に新たな二つ名を与えるように宣言した。


「極光の聖女アリア。そして、その聖女を護る極光の牙シルヴァ! 彼らこそが、神聖国ルミナスの救世主である!」


大神殿の広場に、新たな聖女と聖者、そして彼らの絆を讃える歓声が響き渡る。


極光の聖女と極光の牙。


二人のこの二つ名が、この神聖国ルミナスから世界に轟く日は近い。



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