静寂の裂け目 sideセレスティア
セレスティア視点です!
パタン、と扉が閉まった瞬間、背後のざわめきが遠くなる。
白金の議場から続く長い廊下は、朝の光が均一に広がり、どこまでも静かだった。
私は歩きながら、小さく息を吐いた。
――やはり言うべきではなかった。
「状況がそうさせるなら別です。」
あの言葉が彼にどう受け取られるか、想像がつかなかったわけではない。
彼は曖昧なものほど正確に拾い上げ、意味を与えてしまう。
だから距離を置いてきたはずなのに。
足音だけが淡々と響く廊下で、ふと指先に残る微かな感覚を思い出す。
書類を渡すとき、紙越しに触れた彼の体温。
――くだらない。
意味などない、ただの偶然。
そう言い聞かせるのに、その一瞬が頭から離れない。
私は立ち止まり、壁に手を置いた。
冷たい壁の感触が皮膚を収縮させる。
「......なぜ、あんな顔をするのですか。」
問いかけは声にならず、胸の奥だけで揺れた。
彼の視線は静かで、熱を秘めていて――
そして、こちらが拒絶しても揺らがない。
それが、恐ろしいと思った。
私が何を選んでも、どう動いても、彼は観測する。
感情ではなく、執着でもなく、もっと淡々とした“意志”で。
その根気強さと緻密さが、私のどこかを苛立たせ、同時に不安定にする。
廊下の突き当たりまで来たとき、私はわずかに歩幅を落とした。
――また会うかもしれない。
その可能性を、自分が消さなかったという事実が、胸をざらつかせた。
決定権は私にある。
それは何より安全なはずなのに、どうしてこんなにも息苦しいのか。
だけど、また会うことが嫌いじゃない自分が、もっと理解できない。
視界の端に、ガラス越しの空が広がる。
淡い青。その透明な色が、今日は妙に遠く感じられた。
私はそっと瞳を閉じる。
「......なんて、厄介な男かしら」
それは彼に向けた言葉であり、
同時に――彼に余白を与えてしまった自分自身への小さな叱責でもあった。
今回は結構短めです。まぁ、セレスティアの口数も少ない方だし?(;・з・) ~♪
次回から恋愛要素増えるかなぁと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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