仮面と封筒
ちょっとした人物紹介です!
セレスティア・ノワレイン:冷徹で腹黒い情報員。表向きは重役、裏では情報と人心を操る策士。
マルセロ・ルーヴェン:裏の諜報員。表面は紳士、裏で敵を翻弄する交渉人。意外と執着する。
王都にあるヴァルトライン財閥。窓の外には街の光が放たれていた。
かつかつと、軽い足音が廊下の向こうから来る。扉が静かに開き、低い声が響いた。
「遅くまでご苦労です。こんな時間まで灯りを残すとは、セレスティア様はお仕事熱心ですね。」
マルセロは柔らかな笑みを浮かべながら扉を閉め、窓の外をちらりと見た。
「ところで、噂は耳に入っていますよ。明日の重要な会議に関する“鍵”を持っていると。
だが、肝心な封筒は今夜、どこにあるかが問題だ。あたながその資料を“持っている”のか、それとも――誰かに渡すつもりですかね?」
机に置かれた封筒――それは明日の会議で財閥連合の勢力図を塗り替える、新体制案の原本だった。ヴァルトライン財閥も例外ではなく、その行方ひとつで勢力図が一夜にして変わる。
マルセロは机にある封筒をじっと見据え、ワイングラスの代わりにマグカップを傾けた。表情は穏やかだが、瞳には計算が宿っていた。
「あなたがそれを知ってどうするのですか?」
セレスティアは部屋に入ってきたマルセロに目もくれず、冷たくに答えた。
「おや?さすがは冷徹で名高いセレスティア様のこと。質問の刃を逆手に取るとは。」
マルセロはゆっくりと笑みを深め、両手をポケットに入れ、窓辺に歩み寄り、夜景を見下ろした。
「どうするか、ですか。 そうですね、もしその資料が君の手にあるのなら、私は“交渉”のために動く。もし誰かに渡るのなら、“処理”のために動く。」
マルセロは振り返って、わずかに目を細めた。
「どちらにしても、私が動く。その判断を誤れば、あなたの静寂な夜も、今夜で終わる。」
クスッとセレスティアは冷笑した。マルセロを見て、嘲笑うかのように。
「もし、わたくしがあなたの言う判断を間違えたとしても、あなたに何の力があって、わたくしの静寂な夜を終わらせることができると。」
マルセロの口元の笑みが緩やかに深まった。
「ほう。言葉の選び方まで、相変わらず見事ですね。
私によって終わらせることができないと、まるで、あなた自身が運命を握っているようですね。
だが、あなたがどんなに沈黙を守っても、この街に噂は容赦なく走ります。その時にはあなたにもどうすることもできません。」
僅かに身を乗り出し、低くささやいた。
「だからこそ聞きたい。あなたは静寂を守る代わりに、何かを失う覚悟はありますか?」
セレスティアは何も答えなかった。
二人の間に沈黙が流れた。
「...なるほど、それがあなたの答えですか。ですが、私が得たいと思ったことは得ましたよ。」
マルセロは言った、
「あなたのような人間は滅多に現れない。冷静で、礼儀正しく、すべてを掌で転がしている。だがその完璧さの裏に、何があるのか。恐れか、情か、あるいは……ただの退屈か。」
そして、ゆっくりとセレスティアの背後を通った。
「私は仮面を脱いだ瞬間の人間が、どんな情報よりも美しく魅力的だと思っている。そして、完璧なあなたの仮面が剥がれた時こそ、世界でどんなものよりも美しいと思う。」
「わたくしがもし見せたら?」
マルセロは一瞬だけ、笑みの線が揺らいだ。まるで反応をもらえると想定しなかったように。
「あなたの口から“もし見せたら”という仮定が出るとは。それだけで、もう半分は見せてしまっているようなものです。」
「ですが、もし君が見せたなら私は、その瞬間を記録することも、利用することも、解析することもやめる。ただ、“見届ける”。情報ではなく、証拠でもなく、存在として。私が生涯で手に入れたどんな秘密よりも、その一瞬の方が価値があると思えるならそれはきっと、戦略を超えた“敗北”だろう。」
マルセロは静かにセレスティアの前に行き、机越しに視線を合わせた。声は穏やかだった、しかし底に熱を孕んでいるようにも感じた。そして、独り言のように、
「…君に敗れるなら、それも悪くない。」
「そう、話を戻して、封筒はほしいの?」
セレスティアは無表情のまま聞いた。マルセロは再び冷静な表情へ戻り、わずかに姿勢を正した。
「セレスティア様は感情の線を引くのもお見事だ。」
マルセロはまた、封筒に目をやった。沈黙の数秒が、重く流れる。
そして、セレスティアをまっすぐ見つめた。
「それが“ほしい”かと問われれば、答えは否です。だが、“必要か”と問われれば、答えははい、だ。」
「その封筒を奪いに来たのでは決してございません。ただ、最終的に誰の手に残るのかを確認するために来たのだ。そして今、その答えはもう見え始めている。」
最後まで読んでいただきありがとうございます!
初めて小説を書くので温かい目で見守ってほしいです。
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