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10/12 ファインモーション――「アイルランド王国」

この日記は、実在のいかなる団体や思想に賛同するものではありません。全てジョークとして受け取ってください。

[今日のタイトル]

 アイルランド共和国。世界史を勉強しなくとも知っている人が多い国名である。エールなる呼び名もあるが、明日知人にそれを使ってみても「さよならは 悲しい言葉じゃない」と帰ってくるだけだろう。上司や先輩に言えば怒鳴られるかもしれない。Yellだけに。流石に上司先輩像が古いか。

 小学生の時のことを思い出してほしい。必ずクラスに一人は、イギリスの正式名称を連呼するヤツがいたのではないだろうか。グレートブリテン及び「北アイルランド」連合王国、と。


 そういう小学生の実在性はさておき、同じ地名を東西南北で分け合っている国があるなら、必ずそこには複雑な事情が紛れている。比較的最近のものだと、南スーダンとか、東ティモールとか。


 アイルランドもその例に漏れない。

 クロムウェルの征服がイギリス支配の端緒だと思われがちだが、ヘンリ2世(獅子心王とか欠地王のパパ。この人自身のあだ名は短外套王とでもするべきだろうか)が時の教皇からアイルランド卿の称号を賜り、アイルランド東部に侵攻したのが本当の始まりである――英語版wikiによると退位したアルスター王の要請もあったらしい。

 アイルランドにおけるキリスト教は、ローマ=カトリックの教義から逸脱したものが多かったらしい。当時の西欧世界にとってはアイルランドは辺境も辺境だから仕方ないところもある。聖パトリックが初めての布教者だとされているが、それも5世紀の話である。ゲルマン人への布教の始まりが3世紀末であることを考えるに、しっかり遅い。

 そうした異端に対して、教皇が自身の普遍的権威を行き渡らせるために爵位を授けたとされている。


 そのためアイルランドの王権には元来キリスト教的な裏付けはなかった。

 王座はタラ(Tara)の丘と深く結びつき、神聖視されていた。後世の歴史家によってタラ王冠と呼ばれる。王は土地の女神(Sovereignty Goddes)と婚姻を行うことで、上王(High King)と呼ばれる存在になり、アイルランド全土の儀礼的な君主として振る舞った。感覚としては神聖ローマ皇帝に近しいかもしれない。


 だが、王権は次第に強化されていき、ウイ・ニール(Uí Néill)王朝の時が最大となった。が、11世紀には上王位の独占は終わり、対立上王が現れ始めた。

 そんなことをしているうちにノルマン人やヴァイキングが上陸を始め、イギリスの支配が始まる。

 元々王位を継いでいたゲール――アイルランドにいるケルト人のことである――貴族はイギリス王によって叙爵されたが、17世紀の伯爵たちの逃亡(Flight of the Earls)によってゲール・コミュニティは決定的に崩壊した(トーリー島は例外で、現在も王(ri)を選出する制度が残っている。しかし現在は空席)。


 なお彼らの子孫は生き残っているし、爵位を持ち続ける者もいる。

 カトリック教徒解放法に携わったオコンネルもその一人だ。

 また、前述のウイ・ニール氏族の直系に関しての言及も英語版wikiにてなされていた。C.F. McLoughlinという名前らしく、IRAに所属していたそう。いかにもノブレス=オブリージュといった感じだ、と言えば怒られそうである。あくまでこれはフランス的な概念であって、ゲール的な概念ではない。

 



 「アイルランドの王族」であるかのような描写がなされていて、つい最近それが修正されたことで話題になったウマ娘のファインモーション。

 以上を踏まえるに、彼女はイギリス統治以前の王、つまりはゲールの王族の血を脈々と継いでいる可能性がある。1500年以上の重みに耐えつつ遺伝子混ぜ混ぜプレイをする人がいると考えると涙を禁じ得ない。

 現代に生み出された「ケルト」音楽とかいうパチモンに惑わされることなく、彼女から真のゲール精神を感じていこうと思う。

 


 実はゲームで流れるケルト風のBGMが好きなのは内緒。

 それとモノホンのナショナリストはロンドンデリー(北アイルランド)の「ロンドン」に白いペンキを塗るほどである。嘘偽りなく、文字通り走る国際問題だから、触れるときには十分注意しよう。



ウイ・ニール......ういビーム!?

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