10/6 short²――Answer
少し前に書いたショートショートのネタバラシ。後出しじゃんけんみたいなものです。それを読んでからこっちを読むことをおすすめします。
ちょっとアレな描写があるのは気にしない、気にしない。
俺たちは退屈していた。
起きては寝る。学校に行っては帰る。そんな何気ない日常を、俺たちは機械のように繰り返していた。
大人になればきっと毎日が刺激的で、少なくとも「ここではないどこか」に行けるはずだ、なんて淡い期待があった。でも、きっと今の日常がある程度の形を保ちながら続いていくことに、無意識のうちに気づいていた。
祭りに関してもそうだ。
幼いうちは非日常そのものだったが、今となればいつの間にか終わっている行事になった。
毎年、同じ季節に、同じ出店で、同じ行事。ついでに言えば同じ友達と。
とにかく違うものが、欲しかった。
◆◆◆
いつも昼休みには、ある空き教室で俺たちは色々な話をする。
話題について詳しく語ってもしょうがない。男子高校生にとってありきたりのものだ。
だから、ひょっとしたら、違うようで同じ話だったように思っていたのかもしれない。
春は芽吹きの季節であると共に、変態の季節でもある。
遅咲きの花があるならば、夏に現れる変態がいたっておかしくない――というのは詭弁だが、俺たちが用意できる最高の言い訳だった。
俺は、内に秘めた、だがきっと共有している欲望に従って、あることを提案した。
◆◆◆
電車に少し揺られて、車窓を銀の摩天楼が覆い始めたとき、俺たちは下車した。初めて来た駅だった。
上を向きながら歩いた。傍から見れば俺たちはまさに田舎者だっただろう。もっとも、悲しみをこらえてなどいなかったが。
ブルセラに入ったときなんて、悲しみの「か」の字もなかった。一応先生の評判は良く、成績も優秀な部類だったから、店員にバレたら大変なことになると思って内心ブルブルだった。
顔も知らない誰かの拝金主義に感謝しつつ、余分に色々と買っておけばよかったと後悔して、店を出た。
家に帰ると、ちょうど祭りが始まろうとしている時間だった。日は落ちかけている。
俺は急いで誰もいない家に帰って、戦利品を身に着けた。家族全員に祭り以外の用事があることは確認済みだった。前にファスナーがあることには気づいたが、急いでいたので、上からかぶって着た。
地毛を纏めて、ウィッグを付け、ストッキング(母親のもの)を履いた。俺は目鼻立ちが整っていて色白だったから、女装しても問題ないと思っていたが、予想以上だった。家の戸を急いで叩いてきた親友の驚きの表情からも、明らかだった。
かくいう親友の変装は怪しいものがあった。金髪のウィッグに眼鏡。上下は夏用の制服のように見えて少し違っていた。が、俺が見ても親友その人だとすぐに分かるくらいに、お粗末な変装だった。
俺がそのことを指摘しても、大丈夫と笑って流すだけだった。
祭りに向かう途中、俺はただひたすらに押し黙った。いくら顔立ちが繊細だからといっても、声変わりは来ていた。単に恥ずかしかった、という面もある。
俺の提案通り、射的屋の前に着いた。
銃をあえて重そうに持ってみる。反感を生まない程度に、いじらしく。非常にステレオタイプ的だ。
普段運動となると明らかに手を抜いている女子に苛立ちを覚えていたが、彼女らにも彼女らの苦労があったのだ、なんて教訓めいたことを思い、今の自分の無駄な行為を正当化しようと努めた。この時、おそらく恥がボルテージに達していたと思う。
何分かしてもまだ、親友はばかばかしい押し問答をしている。これを提案したのは俺なのだから、そんなことを思う資格などないことに気づいた30分後にはもう、恥を捨てて、ただただ背徳的な、非日常的な愉悦に身を任せていた。
だが一時間くらいが経つころには、正直飽き始めていた。自分の魂胆があまりに幼稚だったことに気づいたから、というだけでなく、もっと別の理由で。気づけば周りに人が沢山集まっていて、俺は夢中になってクラスメイトやら知り合いの顔やらを探したが、ひとまずは見つからなかったので、安心した。
親友も大体同じ考えだったのか、すっかり熱から冷めた様子だった。店主も同様に。
当初の悪だくみなんてどうでもよくなっていた。が、店主はやれやれといった様子で、棚に手をかけて、全体を前に戻そうとしていた。俺たちは無言だったが、今が潮時である、というのは共通の見解だったと思う。
しかし、短い悲鳴の後に、棚が倒れた。神前で邪念を抱いた罰が当たったのだと思い、恐ろしくなった。
店主からキャラメルを受け取ると、そそくさと離れ、見物客が見えなくなったころを見計らって走った。ひたすらに、一心不乱に。ウィッグがずれているかなんて、気にしないくらいに。
二人で俺の家に来た。俺は親友からウィッグを受け取り、自分のも併せて不燃ごみの袋に詰めた。ちょうどゴミ捨てを頼まれていたから、別のゴミと混ぜて、外からはウィッグが見えないようにした。セーラー服は、自分のクローゼットの奥にしまった。ストッキングは元ある場所に戻した。
隠蔽工作が終わって、落ち着いたころに俺たちは一緒にキャラメルを食べた。親友がどこからともなく笑い出して、俺もつられて笑った。甘くて、すごく落ち着く感じがした。ゴミ捨て場には二人で行き、そこで俺たちは分かれた。
何日か経って、ウィッグが手元に戻ってきたときには、あの夜のものとは違った乾いた笑いが出たが、また変な気を起こすとも限らないと思い、セーラー服と併せて仕舞った。
確たる証拠はないが、ずっと仕舞いっぱなしになるのではないか。今では自然とそう思える。
俺が実家を出るときの笑い話のネタくらいには、なってくれるだろう。
10/13に万博の閉会式があるようですが、行けませんでした。再来年の横浜で我慢するかぁ。でも園芸とかあんまり知らないんだよなぁ。
サウジ? うーん。お金ない。




