10/2 short²
[最近思いついたショートショートのネタ]
タイトルにある通り。万博行きたかったなぁ。
うだるような暑さが冷える夏の夜に、人々はこぞって祭りを練り歩く。
その祭りの熱気の中には、かのシェークスピアが記したような恋人ほどでないにしろ、いつの時代もバカップルはのろける、騒ぐ、くっつく。そういう生き物なのだ。仕方ない。
日本の祭りとは、古来より伝わる固有の神々へと捧げられるものである――確かに間違いではないが、現代の祭りというのは的屋、もとい暴力団の経済活動としての役割が大きい。
だから、いくらバカップルであっても、屋台のおっちゃんはあまり怒らせてはいけない......とされている。
◆◆◆
とある射的の屋台にて、男女が――いや主に眼鏡をかけた男の方が何やら騒いでいる。
「いやさ、コイツが非力なのは見りゃ分かるでしょ。さっきちょっと当たったじゃん。キャラメルくらいくれたっていいじゃんよ」
どうやら、金髪のDQNカップルが問題を起こしているらしい。女の方はわざとらしく銃を重そうに持っている。屋台の店主はそれを見抜いているようだ。が、それを否定することができない。
「彼氏さん、そう何度も言われましてもね、無理なものは無理なんですよ。なんなら彼氏さんがやってあげればいいじゃないですか」
だから、否定せずに上手く議論を着地させようとする。が――
「いや、コイツが『やりたい』って言ってんのに、俺がやってどーすんだよ」
こうして論点は元に戻される。
一進一退、堂々巡りの論戦。次第に見物客も増えてくる。
互いに焦りが見えてくる頃合いに仕掛けたのは、DQN男の方だった。
「じゃあさ、景品のキャラメル、少し前に出してよ。隣のキャラメルはもうちょっと前にあるのに、コイツの真正面にあるのだけ後ろにあるのは不平等だからさ。そうしてくれればもう文句言わないから」
この時、店主は後悔していた。だが、決意もしていた。
ここら一帯は締め付けが強く、貢納金も高い。調子に乗ったことをしてしまえばすぐに自分の収入源はなくなる。しかも最近は祭りに来る若者は減る一方。きっと当たりがでないくじ引きや、還元率1000%のかき氷の衝撃を味合わないままに成長していくのだろう。
その焦りが景品底面ののり付けを固くさせた。加えて、固定される位置はものによってバラバラ。自責の念が自然と湧き出る。指摘はもっともだ。
が、景品を動かすということは、それすなわちのり付けを剥がすということ。あいつらにバレればまた面倒くさいことになる。ならば――と。
この時、店主は死ぬほど疲れていた。既に一時間が経とうとしている。当たり前のことだが、「一時間」は、重い。
それゆえ判断力も鈍っていた。腰痛持ちが、棚一つを丸ごと持ち上げて前にずらそうとしても問題ないと思えるくらいに。
「ア~~~~ッツ!!!」と鋭い悲鳴が響くと共に、支点を喪った棚が倒れる。
双方が、一切棚に触れない。
バカップル側は、人のものを勝手に触らないという謎の良心に基づいて。
店主側は、前向きに倒れた棚を持ち上げた先に待つ、重力を完全に無視した景品たちが並ぶ光景を想像したことによって。
店主は何も言わず屋台の後ろに行き、補充用のキャラメルを二つ持ってきて、バカップルに手渡すと、二人はこれまでの難癖具合が嘘のように、素直に帰っていった。
次第に見物客は散っていき、後には、パイプ椅子に力なく座る店主と、倒れた棚だけが残された。
なお、後日この祭りの会場近くのとあるごみ捨て場にあった不燃ごみが受け取りを拒否されたらしい。
理由は、「ウィッグは不燃ごみではなく、可燃ごみである」から、だそうだ。
久しぶりに物語を書きました。もはや日記ではないですね。
答え合わせ的な話は好きなときにやります。




