真理ちゃんのおばあさんから語られた真実? (1)
「あなた方は……どなた?」
真理ちゃんのお母さんが、おじいさんとおばさんに尋ねているけど……
……?
『あなた方はどなた』?
どういう事?
真理ちゃんのお母さんは、おじいさんとおばあさんが分からないの?
まさか、施設で酷い実験をされて記憶がなくなっているとか?
「……? おじいさんとおばあさんだ。お前の両親なんだろ? 長い間会わなかったって言っていたから分からない設定なのか?」
真理ちゃんが尋ねているけど……
『設定』って?
「……違うわ。本当に……知らない人なの……」
知らない人?
……どういう事?
ていうより、真理ちゃんの言葉の違和感に気づかなかったのかな?
「これは……どういう事だ?」
真理ちゃんを見守っている『繋ぐ者』がおじいさんとおばあさんに尋ねている。
「……ごめんなさい……ごめんなさい……こうするしかなかったの……ごめんなさい……」
おばあさんが謝っている。
一体何がどうなっているの?
おじいさんは悲しそうに真理ちゃんを見つめている。
「とりあえず皆座ろうか。一旦落ち着こう」
おじさんの言う通りだ。
辛そうに謝り続けているおばあさんに落ち着いてもらわないと。
高齢だから心配だよ……
リビングでソファーに座ると、おじさんがキッチンの場所を訊いている。
いいのかな?
よそ様のお宅で自分の家みたいにお茶を淹れるの?
あ……
大量のパイをお皿に盛って戻ってきた。
あれって商店街のパイだよね。
まさか、いつもあの量を一人で食べているんじゃ……
あれ?
今おじさんが叔父さんに目配せしたような?
「はい。お茶でも飲みながらパイをどうぞ。こういう時は甘い物を食べると落ち着くからね」
商店街のパイ……
おいしいんだよね。
シナモン有り無しを選べるんだけど……
私は香りが強いシナモンが苦手だから……
あ!
シナモン無しの形のパイがある!
「……真葵はダイエット中だからな」
……!?
叔父さんが呆れ顔で私を見つめている!?
「うぅ……分かっているよ」
あと一週間の我慢だ……
「……何から話したらいいのか」
真理ちゃんのおばあさんがゆっくり話し始めた。
「……私は……真理ちゃんの『おばあさん』ではないの……嘘をついてごめんなさい」
「え? でも……俺は心が聞こえるけどそんな声は聞こえてこなかった」
確かに。
真理ちゃんは心の声が聞こえるんだよね。
「……それは……私と彼が偽の心を聞かせていたからなの。何十年もそうしてきたから、誰かに心を聞かれても本当の気持ちは聞こえないはずよ」
彼?
おじいさんの事?
「……偽の心?」
真理ちゃんがおばあさんの瞳をじっと見つめている。
心の声を聞いているのかな?