真理ちゃんの家で体重を量ろう~後編~
「暑苦しい……抱きつくな!」
おじさんに抱きつかれた叔父さんが、心から嫌がっている。
「えへへ。やっぱり一真は優しいなぁ」
おじさんは嬉しそうだね。
「汗ビショで頬擦りするな! うわ……お前の周りだけ湿度が高いぞ!」
「ええ? そんな事ないよぉ。えへへ。一真は恥ずかしがりやさんだなぁ」
「やめてくれ……俺には汗ビショの中年と抱き合う趣味はない……」
「ええ? 本当に一真は恥ずかしがりやさんなんだからぁ」
……叔父さんをここまで困惑させるなんて。
おじさんはすごいよ……
「二人は仲良しだな。俺と真葵みたいだ。ところで真葵も体重を量るのか?」
真理ちゃんが嬉しそうに話しかけてきたけど……
「うん……アパートで使っていた体重計が見つからなくて。引っ越しの時にどこかになくしちゃったみたいなの」
「ん? 体重計? 軽トラから運んだぞ?」
「え? あれ? そうなの? じゃあ、おじいちゃんの家のどこかにあるのかな」
「とりあえず家の体重計に乗って帰るか?」
「うん。痩せているはずなのに何回量っても二キロ増えているんだよ」
「ふぅん。そうなのか。独房に行く前より痩せて見えるけどな」
「そうだよね? それなのに体重が減らなくて」
「壊れてるんだろ。ほら、家の体重計に乗ってみろ」
「うん。……あれ? やっぱり……独房に行く前より二キロ痩せている……」
おじいちゃんの家の体重計が壊れていたんだね……
「……ちょうど二キロか」
ん?
叔父さんが呟いた?
ちょうど二キロ?
「……ちょっと……叔父さん?」
「……なんだ?」
「『なんだ』じゃないよ。もしかしておじいちゃんの家の体重計が壊れている事を知っていたんじゃ……」
「……真葵が独房に行っていた時に落としたら壊れたんだ」
「……は!? 知っていたのに黙っていたの!? しかも体重計を落とすってどういう事!? 普通床に置きっぱなしじゃないの?」
この感じ……
まさか私を痩せさせる為に、叔父さんがデジタルの体重計を隠したんじゃ……
「……小銭が体重計の下に落ちたから持ち上げたら落とした」
「……本当に何もできないんだね」
「……お前……冷えきった関係の妻みたいな事を言うんだな」
「はぁ……真理ちゃん、ありがとう。そろそろ帰るね」
叔父さんが家の中をキョロキョロ見回す前に帰ろう……
「そうか? また遊びに来い。今度はお泊まりしながら朝まで話そうな」
「うんっ! でも撮影が終わったらかな。楽しくてつい食べ過ぎちゃうんだよね」
「そうか。楽しみにしているからな。ん? インターホンが鳴ったな。おじいさんとおばあさんじゃないだろうし。宅配かな?」
真理ちゃんが玄関に行ったけど……
モニターがあるのに確認しないでいきなり開けちゃうんだね。
心配になっちゃうよ。
でも『繋ぐ者』が真理ちゃんの隣にぴったりくっついているから安心だね。