真理ちゃんの家で体重を量ろう~前編~
「おはようございまーす!」
真理ちゃんの家のインターホンを鳴らしながら挨拶をすると……
「あ! 真葵! 遊びに来たのか?」
真理ちゃんが嬉しそうに扉を開けてくれた。
隣に真理ちゃんを見守っている『繋ぐ者』も立っている。
一緒に暮らしているのかな?
他の『繋ぐ者』を一度も見た事がないから交替制じゃないのかも。
「おはよう。真理ちゃん。朝早くからごめんね」
「大丈夫だ!」
「体重を量りたくて……いいかな?」
「体重計? お風呂にあるぞ。今、おじいさんとおばあさんは出かけているんだ」
「おじいさん達がいない間に家に入っても平気?」
「あはは! 大丈夫だ。ほら、お風呂はこっちだ。他の二人はリビングで待つか?」
「いや、駿河も体重を量らせてくれ。まさか大台を超えてないだろうな?」
叔父さん……
どうしてもおじさんを体重計に乗せたいんだね。
「ええ!? やっぱり量るの!? ……嫌だなぁ。量りたくないなぁ……」
おじさんは乗りたくないのか……
ちょっとかわいいかも……
「量りたくない? ツクツクの駿河がお前はわざと太ったって言ってたぞ。じゃあ自分の体重を知っても問題ないだろ」
「え? 嫌だよぉ。それとこれとは違うんだ……」
「俺には難しい事は分からない。とにかく量るんだ。今すぐにな!」
「……うぅ。百キロ超えてたら……怖いなぁ……」
「……お前、本当に体重を量ってなかったのか」
叔父さんがかなり呆れている。
「よし……乗るよ」
ついに乗るんだね。
何キロなんだろう?
あれ?
片足を乗せそうで乗せない……
やっぱり嫌なんだね。
「さっさと乗れ!」
「今度こそ……乗るよ」
「……さっさと乗れ」
「……乗る……よ?」
「とっとと乗れ!」
「うわあぁ! 一真が怒ったああ!」
「まったく……怒られないとダメなのか?」
怒られて仕方なく体重計に乗るとギシギシ音がしている。
何キロかな?
「……自分じゃ見えない」
確かに……
お腹で見えなそうだね。
「腹が邪魔して下が見えないのか……」
叔父さんが更に呆れているみたいだ。
「うぅ……一真ぁ……代わりに見て?」
「……まったく……どれ? ……うわ……お前……」
「……え!? 何? 何キロ? 怖い……早く教えて! いや……やっぱり教えないで!」
「九十九キロ……」
「ええ!? よしっ! 百キロは超えていなかった! それに服を着ているからね。たぶん八十八キロくらいのはず!」
「……お前のポロシャツ短パンは十キロあるのか? 真冬でも半袖のポロシャツに短パン……それでも汗をかいてるよな?」
「代謝がいいんだよっ!」
「……はぁ。とにかく少し痩せろ。真葵も心配するぞ?」
「え? ぴよたんが?」
「真葵は駿河を大切に思ってるからな」
「……ぴよたん……そうか……そうだね……もっと太らないと」
「……はあ!? お前……俺の話を聞いてたか!?」
「聞いてた! 聞いてたよ!」
「まったく……どうしてそんなに太りたいんだ?」
「……大切な人を……守りたいから……かな?」
「……? 守りたい?」
「はは。その時が来たら分かるよ。それより……一真ぁぁ……」
「甘えた声を出すな」
「一真ってばぁ……」
「はぁ……なんだ?」
「もう一人の駿河には体重を秘密にしてよぉ」
「……ツクツクの駿河にか?」
「うんうん! ね? お願いぃ……」
「上目遣いするな!」
「一真ぁぁ……」
「……はぁ。仕方ないな」
「やったぁ! 一真大好きっ!」
え?
おじさんが叔父さんに抱きついた!?
これはかなり嫌がるだろうね。
叔父さんは自分が汗をかくのも嫌なくらいだから、他人の汗が身体に付くなんて絶対に赦せないはずだよ。