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鈴木さんは体調が悪いのかな?

「……鈴木さん……ありがとう」


 話せない事がいっぱいあるはずなのに色々教えてもらえて助かったよ。

 

「え? 私は……嫌な事を言ったのに……」


「私がどれだけ、のほほんと暮らしてきたかよく分かったよ……」


「小田さん……」


「私はずっと……パパと叔父さんに守られてきたんだね」


「……二人とも……『彼ら』なのに……お母様を拐った『彼ら』の仲間なのに……そんな風に思えるなんて……不思議ですね」


 また鈴木さんが苦しそうにしている?


「もし……パパが本当の父親じゃなくても……私に注いでくれた愛情は本物だったから」


「……そうですか……そうですね……」


 あれ?

 今度は少し悔しそうな表情?

 やっぱり私に傷ついて欲しかったのかな?


「……うん」


「もし……これから先……本当の父親が名乗ろうとしなくても……それには意味があるはずです。十一年前……父親を喪った小田さんにもう一度父親を喪わせたくない……とか……自分の存在……とか……だから……傷つかないでください」


 あれ?

 今度はまた苦しそうにしている?

 鈴木さんは体調が悪いのかな……


「私の実の父親も……『奴ら』に狙われているの?」


「……それも……私の口からは……小田さん……助け……またいつでも遊びに来てください。免許も無事に取れましたからドライブにでも行きましょう」


 ……?

 何かを言いかけてやめた?

 気のせいかな?

 でも……


「本当に合宿教習に参加していたんだね。はぁ……どうしてかな? 安心した」


「安心……?」


「だって……鈴木さんは『自分を信じるな。嘘をついているから』って言うけど……全部本当の事しか言っていないと思うから」


「……! 本当に小田さんは純粋ですね。心配になりますよ……」


「……鈴木さん……気をつけてね」

 

「はい。小田さんも……絶対に生きて……また会いましょうね」


「うん! じゃあ……またね!」


 こうして私は駅に向かう為に公園を進む。

 ……私を見張っている『奴ら』はこの辺りに詳しくないんだよね?

 もしかしたら……

 走ったら逃げられるんじゃないかな?

 でも、家はバレているから……

 意味ないか。

 でも、やられっぱなしは嫌だよ。

 走ってみる?

 よし!

 走ろう!


 来る時に調べておいた帰りの電車の時刻表……

 出発は十二分後。

 ここからなら駅まで走れば十分かからないはず。

 鈴木さんは、私の見張りは私を守ってくれているって言っていたけど……

 

 ……駅まで走ってみよう。

 もしかしたらどんな人か姿が見えるかも。


 行くよ!

 全力で走るんだ!

 このモヤモヤした気持ちを少しでも軽くしたい……


 全速力で公園を走る。

 あぁ……

 今朝も走ったし明日は筋肉痛間違いなしだよ。


「あははは!」


 誰かが笑っている?

 この声は……

 鈴木さん?

 木陰からこっちを見て楽しそうに笑っている。

 こんな風に笑えるんだね……


 ……あれ?

 SNSのダイレクトメッセージの着信音が鳴った?

 鈴木さんからだ!


『小田さん! 最高です!』


 え?

 私が最高?


 ……あれ?

 誰かが走っている足音が背後から聞こえてくる。

 鈴木さんは私が『奴ら』を振り切ろうとしている事に気づいたんだね。

 よし。

 あのトイレを曲がったら隠れてどんな人か見てみよう。


 もう少しでトイレに着く……


 ……!?

 誰かが腕を引っ張った!?

 トイレの陰に引っ張り込まれた……


「痛……誰?」


「まったく……『誰』じゃないよ?」


「え?」


 ブカブカでヨレヨレのトレンチコートに大き過ぎるハット……


「叔父さん!? どうしてここに……」


「はぁ……小田ちゃんが見に来させたわけがよく分かったよ」


 あれ?

 この声は……


「バーの狩野さん!?」


「やれやれ……真葵ちゃんは向こう見ずだね」


「狩野さん……? どうしてここに?」


「小田ちゃんに心配だから付いていってくれって叩き起こされてね」


「叔父さんに? でもどうして叔父さんのトレンチコートを?」


「このトレンチコートはあの辺りに住むこちら側の人間は皆持っているんだよ」


「……え?」


 皆でお揃いで買ったのかな?

 

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