真葵と一真と呪いの人形? (2)
「……ごめん。真葵ちゃん……おじいちゃんのせいだ」
おじいちゃんが申し訳なさそうに居間に入ってきた?
「どうして謝るの?」
「おじいちゃんは畳職人だから、一真が小さい時にい草で人形を作って遊ばせていたんだよ……すごく喜んで眠る時も一緒だったんだ」
「……叔父さんにもそんなかわいい時があったんだね。生まれた時から生意気で根性がひねくれ曲がってはいなかったんだ……」
「あはは! そんな赤ん坊がいたら見てみたいよ」
「そういえばあの時のアンティークのお店……少し離れた所にあったからなかなか行けなくて、いつの間にかなくなっていたんだよね。跡地にも何も建たないし」
「ああ。火事になったんだよ」
「火事?」
「店主は逃げて無事だったんだけど、店じまいしてね」
「そうだったんだね。残念」
「焼け残った人形を抱えてどこかに行ったよ」
「焼け残った……人形?」
「でも……あの後変な噂があったような……」
「変な噂……?」
「ショーウインドーの人形がマッチを擦っていたとか……」
「この時代にライターじゃなくてマッチ!?」
「……突っ込むところはそこか? 真葵は本物のバカだな」
叔父さんがため息をつきながら私に呆れている!?
「もしかして……私が欲しがっていたあの人形……?」
「さぁな。俺は見てないから知らないが……」
「おじいちゃんは見送ったから知っているよ。確か日本人形だったかな?」
「……!?」
よかった……
買わなくて本当によかった……
でも人形がマッチを擦るなんてあるの?
「本当に呪いの人形だったのか……」
さすがの叔父さんも怖いのかな?
こんな生意気で根性がひねくれ曲がっていても怖い物があるんだ。
「叔父さん……あの時止めてくれてありがとう」
「……買えばよかったな。上手くいけば真葵が大好きな大金持ちになれたぞ」
「ちょっと……変な事を言い出さないでよ。呪いの人形に何をさせるつもり? まさか見世物にして稼ぐとか?」
「そういえばあの店……」
「え? 怖いよ……言いかけたなら最後まで言ってよ」
「あぁ……店の名前が読めなかったな」
「お店の名前? 人形しか見ていなかったから知らないけど……」
「それなら、えーとキ……ケル……ショー……コム? 難しくて忘れたな……フランス語で『誰がこんな物買うんだ』だったような……店主が笑いながら話していた……懐かしいな……あれからもう十年経つのか」
おじいちゃんは十年も前の事をよく覚えているね。
店主と仲良しだったのかな?
「確かに誰も買わなそうな物しかなかったな。あんな物が欲しいのは真葵くらいだ」
叔父さんが明らかに私をバカにしている!?
「ちょっと! 結局買わなかったんだからいいでしょ?」
「どうしてあんな見るからに呪われてる人形を欲しがったんだ?」
「……え? どうしてだろう……うーん……あ……」
思い出したら背中が寒くなってきた……
「どうしたんだ?」
「……一緒に遊ぼうって言われたような気がした……から……」
「……本当に呪われた日本人形だったのか。買っておけばよかったな」
「叔父さんには怖いものがないんだね……」
恐ろしい人だよ……