お兄ちゃんって口は悪いけど優しいよね
「うん……あ、じゃあ繋がらないと。お兄ちゃんのスマホのQRコードを出して? 読み取るから」
「分かった。それと……」
お兄ちゃんが話しにくそうにしている?
「ん? どうかした?」
「……困った事があったらいつでも連絡しろ」
「……え?」
お兄ちゃんが真っ赤になっている?
「勘違いするなよ! ……お前が葵様の娘だからで……保護対象者だからで……だから……」
「勘違い? なんの?」
「いや……だから……連絡先を交換するのは……お前が保護対象者だから……で……だから……」
「……? うん……そうだね」
「はぁ……(俺……男として見られてないのか……)」
「え? 何? よく聞こえなかった……」
「何でもない! さっさと写真を送れ!」
「え? でもまだお兄ちゃんがQRコードを表示していないから……」
「は!?」
お兄ちゃんが怒りながら慌ててスマホをいじり始めた?
「……お兄ちゃん? どうしたの?」
「ほら! さっさと読み取れ!」
「お兄ちゃん……怒っているの?」
「怒ってない!」
「怒っているよ……」
「怒ってない!」
絶対怒っているよ。
何か怒らせるような事をしちゃったかな?
「これでよし。すぐにおっさんから返信がくるだろ」
「うん……もしかして真理ちゃんの事を知った駿河の里の忍びが接触してきたのかな」
「うーん……あの年代なら『駿河様』を崇拝してるはずだ。でも鈴木真理は覚醒に失敗してるよな……」
「真理ちゃん達が大変な事に巻き込まれないといいけど……」
「鈴木真理は今『繋ぐ者』に保護されてるからな。手を出すバカがいるとは思えない」
「『繋ぐ者』ってそんなに怖いの?」
「そうだな。俺も実際見たのは狩野さんが初めてだから聞いた話しか知らないけど……お前には聞かせられないような事をしてるみたいだ」
「私には聞かせられないような事?」
「団体を簡単にいくつも壊滅させるような『暗殺部隊』を率いてる三人の『繋ぐ者』は特に恐れられてるな」
「それって……狩野さんもそうなんだよね?」
「そうだな。穏やかそうに見えるからそんな風には思えないけどな」
「……」
……私を守る為に酷い事をしているんだね。
「……真葵? 怖くなったか?」
「え? あ……ううん。大丈夫……」
「突然色々分かって驚いただろ……」
「……うん」
「ゆっくり慣れればいいんだ」
「……お兄ちゃん」
「大丈夫。お前が覚醒しなければ俺もおっさんもずっと見守れるから」
「……うん」
本当の事が話せなくて申し訳ないよ……
「とりあえず町内を二周して帰るか」
「そうだね……」
お兄ちゃんはおじさんが言った通り、口は悪いけどすごく優しいんだね……
本当の事を話せなくて心が痛いよ。