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真理ちゃんは天然だけど賢いんだよ

「はあ!? 一緒に住んでいるのに親子だって気づかないなんてどんなバカなの!? そんな嘘誰も信じないよ!」

 

 叔父さん……

 さすがにこれは無理だよ。


「大丈夫だ。初めは変だと思われてもそれが長く続けば当たり前になる」


 叔父さんは本気でそう思っているみたいだ……

 もしかして私が知らないだけでそれが当たり前なの?


「……そう……なのかな?」


「そんなもんだ。それにしても鈴木が免許を持っててよかったな」


「そうだね。私も叔父さんも持っていないから助かったよ」


「鈴木はあんな天然でも免許をとれたんだな」


「ちょっと……失礼だよ。真理ちゃんはあれでもかなり頭がいいみたいだし」


「そうなのか?」


「今は大学を辞めて駅前で塾講師を始めたらしいよ」


「まだ越してきて二日だろ?」


「おじいさんとおばあさんに楽をさせてあげたいんだって」


「へぇ……」


「そういえばおじいさんとおばあさんは今は農業をしていないのかな?」


「……? 農業?」


「ほら、真理ちゃんが初めて探偵事務所に来た時に話していたでしょ?」


「……? 何をだ?」


「真理ちゃんのおばあさんは農業が忙しくて……みたいな事?」


「農業? それはこの町に来る前の話か?」


「え? うーん……真理ちゃんのおじいさんとおばあさんは、私のママがこの町にいた時に引っ越してきたんだよね? その時には真理ちゃんのお母さんは結婚して別に住んでいたって言っていたでしょ?」


「少し聞いただけなのによく覚えているな」


「真理ちゃんのお母さんは病気がちな息子さんの子育てが大変だけど、農業が忙しい実家には頼れなかった……それが事実ならおじいさんとおばあさんはその頃にはもうこの町に住んでいたんじゃないかな? でも越してきたばかりの知らない土地で農業って簡単に始められるの?」


「……この辺りに畑はない」


「……え? あ……確かに……」


「鈴木夫妻は本当に農業をしているのか?」


「うーん……分からないよ。猫のモモちゃん捜しの依頼を受けてお宅に行った時は年金生活をしているのかなって思ったけど……高齢だから農業をやめたのかもしれないよね」


「……鈴木夫妻……か」


「……叔父さん?」


「おい! 真葵! 軽トラを借りてきたぞ!」


 真理ちゃんが元気よく玄関を開けた。

 今日も華奢で色白でかわいい……


「おはよう。真理ちゃん。でも借りたって……?」


「塾生が貸してくれたんだ」


「塾生? え? 真理ちゃんが講師をしている塾の? 高校生とか中学生とかじゃないの?」


「中年の男だ」


「あれ? 学生向けの塾じゃなかった?」


「もう一度勉強し直したいらしい。でも、心を聞いたら狩野の仲間らしいな」


「そうなの?」


「俺を見守っているみたいだ」


「へぇ。怖い人じゃなさそう?」


「ああ。優しいな。困っているとさりげなく助けてくれるしな。でも……」


「どうかしたの?」


「さすがは『繋ぐ者』だな。作られた心を聞こえさせるのが上手い」


 なるほど。

 作られた優しさ……か。

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