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汚部屋とキノコと黒い奴(2)

「本当に!? キノコってお風呂に生えるの!? うわあぁ! 何これ!?」


 真っ白くてかなり立派な……

 こんなになるまで放っておくなんて……

 叔父さんめ……

 食べさせてやろうかな……


「真葵ちゃん……『今夜の叔父さんの夕飯に入れてやる』とか考えていないよね?」


 狩野さんが呆れ顔で尋ねてきたけど……


「一瞬……一瞬だけだよ……今は思っていないよ」


 毒キノコじゃ……ないよね?


「……真葵……今日の夕飯は外食だ」


 この声は……


「叔父さん! ちょっと……なんなの!? このキノコは!? しかも部屋も汚いし!」


 もしかして聞かれたかな……

 今は怒ってごまかそう。


「お前……そのキノコ……俺に食わせようとしたな。それにしても一か月でここまで育つとは……」


「『育つとは』じゃないでしょ!? こんなキノコが生えるまで放っておくなんて!」


「……キノコじゃない。お前……太っただろ……」


「な!? ……少し……だよ……」


 バレた!?

 毎日ご馳走を食べてダラダラしていたのがバレた!?


「……何キロだ?」


「えっと……一キロ?」


「嘘をつくな」


「……二キロ?」


「……今すぐ体重計に乗れ」


「……嫌だっ! 怖くて乗れないっ!」


「お前……駿河みたいだぞ……」


「駿河? まさかおじさんの事!?」


「お前……次の撮影日はいつだ?」


「……再来週……かな?」


「……お前……その日にクビになるぞ……」


「ダメ! 絶対ダメっ! 唯一のお小遣いなんだからっ!」


 探偵の仕事の稼ぎは叔父さんに全部取られちゃうから絶対にモデルをやめられないんだよ……


「……狩野。毎日何を食わせたんだ?」


「あはは。目玉焼きかな?」


「目玉焼き? それだけでこんなに丸々と……」


 叔父さんが頭の先から足の先まで見つめて呆れながら呟いた!?


「丸々と!? ちょっと! 失礼だよ!?」


「うーん……ステーキと、目玉焼きが乗ったライスをおかわりして……その後パンも……」


「うわあぁ! 狩野さんっ! ダメダメ! 話しちゃダメっ!」


「お前……よく見たらウエストがゴム……」


 叔父さん!?

 ゴムなのがバレた!?


「うわあぁ! よく見ないのっ!」


「これは……クビ……」


「痩せるもんっ!」


「あと二週間で?」


「大丈夫だもん!」


「……走れ。朝から晩まで走れ」


「大丈夫だもん! 我が家の食生活に戻ればすぐ痩せるもんっ!」


 でも……

 痩せなかったらどうしよう……

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