汚部屋とキノコと黒い奴(1)
一か月後___
「叔父さん、ただいま……って! うわあぁ! 部屋が汚いっ!」
たった一か月留守にしただけなのに……
何これ……
ゴミ捨てをしなかったの?
ビールの空き缶がテーブルにいっぱい……
「いつもこんなに汚いのか? 小さい部屋だな」
真理ちゃんがキョロキョロしながら部屋を見ているけど……
埼玉でも豪邸に住んでいたみたいだし、狩野さんの施設も高級ホテルみたいだったからこんな小さいアパートなんて見た事がないんだね。
「いつも私が家事をしているからね……叔父さんはどこ? 片付けを手伝わせないと」
「真葵ちゃん。全部の部屋に不審者はいなかったよ。それにしても散らかっているね」
狩野さんも呆れている。
施設を出たから軍服みたいな服は着ないんだね。
「叔父さんは?」
「いなかったよ。探偵事務所かな? 行ってみる?」
「その前にゴミ捨てをしないと。今日はちょうどリサイクルの日だから空き缶を出してくるよ」
「はは。真葵ちゃんも大変だね」
「まったく……叔父さんは、だらしないんだから」
「忙しかったんじゃないかな? 見守る者を増員するみたいだしね」
「忙しくなくても、いつも靴下は脱ぎっぱなしだし飲み食いした物はそのままだし……うわあぁ! 汚れた洗濯物が山積みだ! もう! 急いで洗濯しないと。あぁ……黒光りする『奴』が現れそうだよ……」
考えただけで背中がゾワゾワする……
「はは。真葵ちゃんは小田ちゃんの母親みたいだね」
「違うよ! 叔父さんがいつまでも赤ちゃんなの! 電話して掃除を手伝わせないと……」
「うーん……小田ちゃんは素直に手伝うかな?」
「家にいるだけでもいいの。そうすれば狩野さんが、おじいさんとおばあさんの家に真理ちゃんを連れていけるでしょ?」
こんな事なら毎日電話して部屋を掃除しろって言えばよかった。
いや……
言ったところでしないか……
よし。
叔父さんに電話だよ!
「鈴木真理……二か月生き延びたね」
狩野さんが真理ちゃんを見つめながら呟いた。
「前例なんてそんなものだよ。あ! もしもし!? 叔父さん! 部屋が汚いんだけど!? は!? 部屋が汚いからおじいちゃんの家で寝泊まりしている!? 今すぐ帰ってきて! 今すぐっ!」
「真葵ちゃん……怖いよ……」
「叔父さんは甘やかすとダメなの! しっかり手伝わせないと!」
「はは。本当に母親みたいだね」
狩野さんが呆れながら笑っている……
あれ?
真理ちゃんが静かだね。
違う部屋を見に行ったのかな?
「真理ちゃんは?」
「ん? どこかな? 鈴木真理は好奇心旺盛だからね……」
「おい! 小さい風呂場に大きいキノコが生えているぞ!」
え?
真理ちゃん!?
お風呂にキノコ!?
しかも大きいって!?
我が家のお風呂に巨大キノコが生えているっていう事!?