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再会と複雑に絡み合う嘘(8)

「政治家が非公認の団体を操っているんだね。政治家は日本を強くする為に『駿河』の完全体を欲しがっている……じゃあ駿河の里の忍びが『駿河』の完全体を欲しがる理由は?」


「ただの崇拝だけじゃなさそうだけど……そこまでは分からなかった。崇拝の理由は駿河の里のエリートだけが知る秘密らしい。そういう奴らは常に警戒していて心が聞こえてこないんだ」


 パパにも分からないんだね……


「おじさんは『駿河』の完全体は里の皆の願いって言っていたけど……おじさん自身はそれを望んでいなそうだった。それはおじさんがその秘密を教えてもらっていないからだったのかな?」


「……短パンの駿河は里にいる時から他とは違った感じがしたけど……気を許し過ぎたらダメだよ?」


「……うん。誰が味方で誰が敵か分からないからね」


「パパは真葵に生きていて欲しい。ただ穏やかに……真葵が完全体の『駿河』だと知っているのはパパと真葵だけだ。施設長にも絶対に知られたらいけないよ? 一か月後に施設でする血液検査の結果はパパが改ざんするから安心して」


「……うん」


「それから……真葵……」


「うん?」


「小田ちゃんの事……『お父さん』って呼んであげて」


「……パパ」


「パパは真葵の叔父さんなんだ。パパは初めからそれを知っていた。かわいいかわいい姪を育てられて本当に幸せだよ。葵もパパが弟だと知っていたから真葵を預けたんだ」


「ママは知っていたの?」


「葵は覚醒者だからね。心は筒抜けだよ」


「パパも?」


「いや。パパは葵ほど心を聞く力が強くなくてね」


「そうなんだね」


「小田ちゃんは真葵の存在を知ってから必死に捜していたらしい。やっと辿り着けて会いに行ったら……」


「パパが拐われた後だったんだね」


「小田ちゃんは心から真葵を愛しているよ。その気持ちに嘘はない。だから……『お父さん』って呼んであげて。パパに気を遣わなくていいんだ」


「……パパ」


「大好きだよ。かわいい真葵。真葵はパパの全てだよ」


「……うん」


「小田ちゃんもそう思っているけど……不器用だから上手く表現できないんだ」


「……うん」


「一か月後……『お父さん』って呼んであげて」


「……うん。パパ……ごめんなさい……大事に大事に育ててくれたのに……違う人を『お父さん』って呼ぶなんて……」


「謝らないで。パパは叔父さんとしてこれからも真葵を愛し続けるよ」


「……パパ」


「さぁ、もう泣きやもうね。鈴木真理がお風呂から出てくるかもしれないよ?」


「……うん。でも……少し長いね……」


「浴槽で寝ていたりして……」


「え? 大変! 私、見てくる!」


 かなり疲れていたみたいだし……

 本当に寝ていたりして……


 慌てて浴室の扉を開けると……

 え!?

 ジャグジーで泡風呂をしながら寝ているの!?

 大量の泡の中に頭頂部しか見えないよ!?


「うわあぁ! 鈴木さん! 本当に寝てる! 起きて起きて!」


「うぅーん……」


「『うぅーん』じゃないよ! 起きて!」


「から揚げ……」


「は!? から揚げ!?」


「……」


「ちょっと! 何がから揚げなの!? 早く起きて!」


「……」


 なんとなく分かってはいたけど、鈴木さんの中にいる人って天然だよね……

 この人と一か月同じ部屋で過ごすのか……

 なかなか手がかかりそうだよ…… 

 でも……

 ちょっと楽しそうかも!

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