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鈴木さんの中にいる人(7)

「この身体の女は今は話さなくなった。でも存在しているのは分かる」


 鈴木さんの中にいる人が心を確認するように話している。


「……あなたはさっき私の身体に入りたいみたいに言っていたよね? それをどうやるか教えてくれる?」


 それが分かれば鈴木さんの感情が表に出て来られる方法が分かるんじゃないかな?


「そこから先は場所を変えて話そうか」


 狩野さんが話しかけてきたけど……

 他の人に聞かれたくないのかな?


「待ってくれ。女の祖父母と少しだけ話させてくれ」


 鈴木さんの中にいる人が狩野さんに真剣にお願いしている。


「……分かった」


 狩野さんが少しだけ険しい表情で返事をした。

 私の手を離した鈴木さんがおばあさんに向かってゆっくり歩き始める。


「……すまない……覚醒に失敗したから……俺が……孫の身体を……」


 鈴木さんの中にいる人が、おばあさんに申し訳なさそうに話しかけている。

 おばあさんはどう思っているのかな?

 

「……あなたも……被害者なのね……無理矢理作り出されたの……?」


「すまない……この身体はあと一か月生きられないかもしれない……」


「……ごめんなさい……私は……何も言えないわ……あなたを恨む言葉しか出てきそうにない……息子も娘も孫二人も拐われた……その孫の一人があなたの身体……もう何もない……もう……私達には……何も……」


「……拐われた娘は……病院に連れていかれたらしい」


「……え?」


「だから……お母さんは生きているから……そんな顔をしないで……おばあちゃん……」


「真理ちゃん!? 真理ちゃんなの!?」


 ……え?

 今のは本当の鈴木さん!?


「ごめんね……ごめんね……おばあちゃん……」


「真理ちゃん……あぁ……真理ちゃんなのね……」


 おばあさんが涙を流しながら話している。


「……すまない。今は……これ以上は無理だ」


 ……?

 鈴木さんが消えた……?


「あなたは……真理ちゃんじゃないのね? これ以上は無理って……?」


「この身体の女は苦しんでいる……これ以上話せば更に苦しむ事になりそうだ」


「そんな……どうして……」


「かなり強い薬を大量に盛られたようだ」


「真理ちゃんが……苦しんでいるの?」


「でも……生きたいと強く願っている気持ちが伝わってくる」


「真理ちゃん……」


「前よりは症状が落ち着いているようだ」


「そう……なの?」


「一か月ほど前、団体の奴らには俺が覚醒したように見えたらしい。俺にはよく分からないが……奴らはそれから薬を盛るのをやめた」


「じゃあ今は薬の効果が切れそうになっているの?」


「いや、それは分からない」


「……分からないの?」


「他人の娘が死のうが苦しもうが団体の奴らには関係なかったんだろうな……女はかなり苦しんだはずだが薬を盛るのをやめなかったようだ。でも俺の人格が出てくると奴らは薬を盛るのをやめた」


 ……え?

 それって……

 鈴木さんが自分を守る為に第二の人格を作り出したんじゃ……

 じゃあ今話しているのは駿河の人格じゃなくて鈴木さんが作り出した人格?

 でも、そうだとしたら他人の心を聞けるのは変だよね?

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