鈴木さんの中にいる人(4)
「一か月の間に体制を整えるつもりだ。それに狩野がいれば真葵は傷ひとつ負わないだろ?」
叔父さんが体制を整えさせるの?
もしかして叔父さんも偉い人なのかな?
考えてみれば時々ある迷い猫捜しと浮気調査の依頼だけで普通に生活できるはずがないよ。
一応駿河の末裔だし覚醒しているから支援を受けているのかも……
それか私を守っているお給料をもらっているとか?
「……そうだね。完璧に守るよ。体制を整える……か。そうした方がいい。見守る者を増やしてこれから先の事に備えるべきだよ。俺以外の『繋ぐ者』に真葵ちゃんの存在を知られたはずだしね」
狩野さんが真剣な表情で叔父さんと話している。
「はぁ……また厄介な事になりそうだ」
「いつかはこうなると思っていたよ。真葵ちゃんは特別だからね」
「……本当に鈴木が偉い奴の孫を拐っていたらどうしたんだ?」
「そうだね……鈴木真理の精神破壊の力でその『偉い奴』とやらを消せばいいんじゃないかな? あいつらの替わりはいくらでもいるからね」
「狩野らしい考えだな」
「あいつらは事件の隠蔽以外役に立たないからね」
「それもそうだな」
今の話から考えると『繋ぐ者』は狩野さん以外にもいて、実際は『偉い奴』よりも『繋ぐ者』の方に力があるっていう事?
「真葵ちゃんの事は任せて。一か月大切に預からせてもらうから。検査はそれが終わってから始めよう。それから……鈴木真理は一度でも暴れたら処理させてもらう。真葵ちゃんを守るのが俺の役目だからね」
「真葵。分かったか? 鈴木を守りたければ暴れさせるな。それから……俺の言葉を思い出して気をつけて過ごせ」
叔父さんの言葉を思い出す?
今した話じゃなさそうだ。
あ……
狩野さんを信じるな。
こっちの情報を渡さずに相手の情報を引き出せ。
だよね?
「……うん。気をつけて過ごすよ」
「狩野、知ってるよな? こいつはこんなバカでも一応モデルだからな。体型維持だけは気をつけてくれ。放っておくと好き放題飲み食いするんだ。そうなれば仕事がなくなる」
「はは。気をつけるよ」
狩野さんは知っていたんだね。
「え? こいつがモデル?」
お兄ちゃんは知らなかったんだね。
撮影日は毎回おじさんが見守ってくれていた日だったのかな?
「そうだ。こんなバカでもモデルができるんだ。写真にバカは写らないからな」
「もう! 叔父さんはバカバカ言わないでよ!」
「バカだろ。まだ鈴木に馬乗りになってるしな。狩野が交通規制しなければ、か弱い女の子を巨大な女がいじめてるって通報されてるぞ?」
「え? あ! 本当だ。ごめんね。重かったでしょ?」
「……重さは感じない。痛覚もないからな」
本当に痛覚がないのかな?
しかも重さも感じないの?
それって自分の身体じゃないからっていう事なんじゃ……
うーん……?