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鈴木さんの中にいる人(2)

「怖くない? 襲撃されたのに?」


 おじいちゃんが驚きながら尋ねてきたけど……


「おじいちゃんの腰を痛くした事は本当に申し訳ないと思っているよ。私のせいでごめんなさい」


「それは真葵ちゃんのせいじゃないよ」


「……鈴木さんに生きて欲しいの。前例があるからあと一か月で死んじゃうとか……そんなの変だよ。鈴木さんは鈴木さんなんだから……前例通り二か月しか生きられないかどうかなんて分からないでしょ? 暴走するかどうかも分からないんだよ? 今だって私に馬乗りになられて動けないままだし」


「これからもっと狂暴になるかもしれないよ?」


「おじいちゃんは……私が覚醒に失敗して……暴走するかもしれないから殺すって言われたら……どうする?」


「……それは……絶対に……嫌だよ」


「同じだよ。鈴木さんのおばあさんとおじいさんも諦めたくないの」


「……どうして諦めたくないんだ?」


 鈴木さんの中にいる人が尋ねてきた。

 

「それはね? おばあさんとおじいさんが鈴木さんを愛しているからだよ?」


「……愛? でも俺は……この身体の女じゃ……ない」


「だとしても……喪いたくないはずだよ」


「俺を……喪いたく……ない?」


「訳の分からない実験をされて……あなたも被害者なんだよね」


「俺が……被害者?」


「あなたは本当に駿河なの?」


「え?」


「さっき自分は駿河に近いみたいに言っていたけど……皆が作り出そうとしている駿河は実際どんな人だったんだろうね」


「それは……俺は施設の奴らの心を聞いて……俺が駿河に近いと……駿河は他人の精神を破壊する恐ろしい力の持ち主で……だから……危険で……」


「駿河の記録は空襲で焼かれたんでしょう? 本当の駿河がどんな人だったかは誰にも分からないんじゃないかな? 本当はすごく優しくて良い人だったかもしれないよ?」


「優しくて良い人? そんなはずは……」


「真実は誰にも分からないんだよ」


「……え?」


「立場によって見え方は変わるから」

 

「……立場によって?」


「だから……自分を悪だと決めつけないで」


「……俺は……悪じゃ……ないのか?」


「もう暴れないよね?」


「……どうしてそんな事を訊くんだ?」


「あなたを狙っている暗殺部隊に銃をしまってもらいたいから……かな」


「……俺は……危険人物だ。それはできないだろ?」 


「かわいそうに……自分は悪だから銃を向けられるのが当たり前だと思い込んでいるの?」


「それは……」


「そんなの当たり前のはずがないよ」


「……当たり前じゃ……ないのか……」


「うん。当たり前なんかじゃないよ」


「……暴れないと言えば……銃を向けられないのか?」


 鈴木さんの身体が小さく震えている。


「狩野さん……銃をしまわせてもらえないかな?」


「……できないと言ったら?」


「できなくないよ? 狩野さんが言う事なら皆聞くんでしょう?」 


「……はぁ。言い出したら聞かないのが真葵ちゃんだよね」


 狩野さんが呆れながらため息をついた。

 この感じ……

 やっぱり狩野さんは……

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