襲撃なんて物語の中だけじゃないの?(4)
「……鈴木真理。大人しく投降しろ」
この人が鈴木さんのお兄さんを保護している施設長?
悲しそうにも見えるけど……
厳しい表情で鈴木さんに話しかけている。
「……ふふ。嫌よ」
「鈴木真理!」
「ねぇ。勝手に実験台にして手に負えなくなったら殺すとか……ずいぶん身勝手よね」
「……車から降りて来なさい」
「……嫌よ」
「このままだと暗殺部隊が君を車ごと爆破させる事になる……君を助けたい……こうなってしまったのは全て私の責任だ」
「嫌よ。私は捕まらないわ。それに車を爆破なんてできないわ。……後部座席に誰が寝ていると思う?」
「……? 後部座席?」
「ふふ。駿河を作り出したい『お偉いさん』のかわいいかわいいお孫様がおねんねしているのよ」
「……なに?」
「ふふ。簡単だったわ。ほら、私って精神に入り込む事ができるでしょ?」
「誘拐したのか?」
「違うわ。自らの意思で付いてきたの。力が強過ぎて眠ったまま起きなくなったけど。あはは!」
「なんて事を……」
「本当に身勝手な奴ね。自分達は何の罪もない一般人を勝手に実験台にしているくせに、偉い奴の孫はダメなの?」
「……」
「言い返せないわよね。ピックアップされた人達やその家族は皆そう思うはずよ? 偉い奴は守られるのに自分達は……ってね」
「それで誘拐したのか?」
「うーん……ぬくぬくした環境で何も知らずに守られている奴を見ると殺したくなっちゃうの。ゆっくり……じわじわ苦しめながらね……」
「君は……どちらにしろもうすぐ死を迎える。覚醒に失敗すると……二か月生きられない」
「あはは! 知っているわ。だって私には分からない事なんて何もないもの」
「人らしい最期を迎えて欲しい……」
「は? 人らしく? こんな風に死ぬ未来を作り出したのはお前達だ!」
人格が安定していない……
ていう事はまだ鈴木さんが存在している……?
「頼む……投降してくれ。必ず……痛みのない最期を……」
「どこまで勝手なんだ! 俺は最も駿河に近い! お前達が望んだ駿河にな!」
「……鈴木真理……頼む……」
この施設長は悪い人じゃなさそうだ。
心から鈴木さんに申し訳なく思っている気持ちが伝わってくる。
こんな人が酷い事をしているなんて信じられないよ。
「真理ちゃん……? 真理ちゃんなの!?」
この声は……
鈴木さんのおばあさん?
真っ青な顔をしながら叫んでいる……
おじいさんは座り込んで動けなくなっている。
「……?」
鈴木さんは、おばあさんの事が分からないみたいだ。
「これは一体……真理ちゃんをどうするつもり!?」
おばあさんがフラフラしながら歩いて来ている。
え……?
いつの間にか銃を持った黒ずくめの人達に囲まれている。
まさか……
これが暗殺部隊?
どこかに狩野さんもいるの?