寝た振りっていつ起きればいいか分からないよね(2)
「穴に入り込むのもやめろよ? 巨大化したから抜けなくなる」
おじさんの相棒のヒョロヒョロでツクツクの人……
口は悪いけど、ずっとおじさんの心配をしているみたいだ。
「あはは。そういうのでもないよ」
おじさんもそれが分かっているから、かわいくて仕方ないんだろうね。
聞こえてくる声がすごく嬉しそう……
「……じゃあどこで何をするんだ?」
「はは。武器屋に行ってくるだけだよ。電話で頼んだお金は持ってきてくれた?」
「施設長から預かってる。でも武器屋に行くにしては少ないんじゃないか? こんなんじゃ何の情報も買えない。電車賃くらいにしかならないだろ」
「大丈夫。問題ないよ。それよりピヨたんをしっかり守ってね」
「はぁ……分かってるよ。おっさんはこいつが産まれてからずっとそうだな。俺が小さかった頃も、里に帰って来るたびにこいつの話ばかりしてただろ?」
「はは。何よりも大切なんだ」
「葵様の子だからか?」
「それもあるけど……それだけじゃないよ。ピヨたんの『パパ』がどれほどピヨたんを愛していたか……俺はずっとその姿を見てきたんだ。でもピヨたんの『パパ』はもうパパとしては守れなくなってしまった」
「部署が変わったのか? 俺がこいつの担当になったのは二年前だから何も知らないんだ。確か拐われたけど生きてるんだよな?」
「あぁ……そうだね。すぐに助け出したから」
「……おっさん?」
「ん? 何かな?」
「こいつを育てた『パパ』って奴は駿河の里出身なんだよな? 俺は会った事がないけど」
「優秀だから幼い時に施設長にスカウトされて里から出たんだ」
「ふぅん。おっさんより優秀だったのか?」
「はは。俺なんかまるで相手にならないさ。全てにおいて凄かった。憧れだよ。だから同じ施設で働けて嬉しくてね」
「でも拐われたんだろ? 本当に強いのか?」
「あれはピヨたんを守る為にそうしたんだよ。それに……」
「それに?」
「あぁ……まぁ色々あるんだよ。じゃあピヨたんを頼んだよ。それと……一真と喧嘩にならないでね。ピヨたんをバカにするような態度をとらないんだよ?」
「分かってるよ。保護対象者を守るのが俺の役目だからな」
「心配だなぁ……」
「いつまでも子供扱いするなよ。俺が三歳のガキのままだと思ってるんだろ?」
「そうか。俺が里を出た時、君は三歳だったのか。小さくてかわいかったなぁ」
「おっさんは十七歳だったか?」
「はは。あれから二十三年かぁ」
「おっさんは四十なのか。昔なら初老だな」
「うーん。今の初老は六十だっけ? 俺はまだまだ若い人には負けないよ」
「……おっさんが強かったのは知ってるけど……今のおっさんはそうは見えないからな」
「今でも強いから大丈夫だよ。一真とおじいさんが帰って来たら俺は行くから」
「武器屋からそのまま施設に帰るんだろ?」
「そうだね。葵様にピヨたんの話をしたいからね」
ママに私の話を?
ママ……
どんな人なんだろう。
おじさんは私の事をどんな風に話しているのかな?