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それぞれの拐われた家族(7)

「はぁ……外の自販機でスポーツドリンクを買ってくるからソファーで寝てろ」


 叔父さんが私に呆れている……

 当然だよね……


「うぅ……はい……」


「一真……怒らないであげて。俺の分のご飯と電車賃を払ってくれたからお金がなくなったのかも」


 おじさんが私を庇ってくれている……


「はあ!? お前……毎日かなりの額を支給されてるだろ? まさか……またお菓子を買い食いして……」


「だって……商店街のクッキーとかパイとかパンとかの匂いが堪らないんだよ……」


「だからって太り過ぎだろ!? この町に来てから何キロ太ったんだ!?」


「十キロ……?」


「嘘をつくな」


「二十キロ……」


「まだ嘘をつくのか?」


「三十キロ……本当は怖くて体重を量ってない……」


「お前……そのうちクビになるぞ」


「……!? クビ……嫌だよ! ピヨたんから離れるなんて嫌だ!」


「さっきからピヨたんピヨたんって……まさか真葵の事じゃないだろうな?」


「だってピヨピヨしててかわいいから……」


「……お前……本当にクビになるぞ」


「うわあぁ! 絶対にダメ! 俺が飲み物を買ってくるから! 役に立つから!」


 おじさんが慌てて外に出ていったけど……

 すぐに戻ってきて申し訳なさそうに扉から顔を出している。

 

「ごめん……お金貸して?」


 ……おじさんは本当に悪い人じゃなさそうだよね。

 私を守る為に怪我をしないか心配になっちゃうよ。

 帰りの電車賃はあるのかな?


 叔父さんと畳屋のおじいちゃん、おじさん以外はそれぞれ帰っていった。

 時計をずっと見ていた男性も十八時の音楽が聞こえるとすぐに出ていったけど……

 おばさんが言っていた通り、特定の誰かを見張っている感じじゃなかった。

 あの人は誰なんだろう……


 スポーツドリンクを飲むとソファーで横になる。

 うぅ……

 頭と脚と目が痛い。

 熱中症になったのは初めてだ。

 熱もありそうだし。

 でも……

 覚醒じゃなかったんだね。

 もし覚醒だったら……

 頭の中に駿河の声が聞こえて身体中の血管が波打つように動く……?

 駿河の身体の何かを入れるとそうなるの?

 鈴木さんは幼い子供にする治療を今されていて……

 狩野さんがその団体を暗殺部隊に消させている?

 うぅ……

 頭が痛くてこれ以上は考えられない。


「真葵……動けないならこのままソファーで寝ろ」


 叔父さんが心配そうに話しているけど……

 頭がぼんやりして上手く返事ができないかも……


「……うぅ……」


「無理に返事をしなくていい。俺はアパートに帰って保冷剤を持ってくる」


 叔父さんは、こういう時は優しいんだよね……


「じゃあ、おじいちゃんは熱中症に良さそうな飲み物と食べ物を持ってくるよ。駿河さん。真葵ちゃんをお願いします」


 おじいちゃんも行っちゃうの?

 おじさんは『奴ら』なのに信頼されているんだね。


「任せて。もうすぐ交替の時間だけど体調が心配だから今日はもう少しだけここにいさせてもらうよ」


 おじさんが一緒にいてくれるの?

 嬉しいかも……

 


 ……あれ?

 少し寝ちゃったかな?

 ゆっくり目を開けると、おじさんが濡れたタオルを額に乗せてくれている。

 ひんやりして気持ちいい……


「起こしちゃった?」


「……気持ちいい」


「そっか……今日は色々あったから疲れたよね。おじさんがずっと一緒にいるから安心して眠るといいよ」


「……おじさんは優しいね」


「優しい……か。そうでもないよ……おじさんは……ダメダメなんだ」


「……ダメダメ?」


「大切な人を守れなかった……」


「大切な……人……?」


「だから……ピヨたんは……ピヨたんだけは……今度こそ奪わせない」


「……おじさん?」


「今は眠るんだよ……嬉しいな……これからは堂々とピヨたんを守れる」


「……私も……おじさんと一緒にいられて嬉しいよ」


「おじさんとピヨたんは似ているね。大事な人を奪われた……でも……」


 おじさんの優しい声が心地いい……

 頭がぼんやりして……

 眠い……


「おやすみ……ピヨたん……」


 何か大切な話をしていたみたいだけど……

 眠くて起きていられない。

 後でまた話してもらおう……

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