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それぞれの拐われた家族(5)

「これからはママの話や、ママと一緒にいた頃の小田さんがどれだけニヤニヤ嬉しそうだったか話してあげられるわね」


 おばさんが優しく微笑みながら話しているけど……


「叔父さんがニヤニヤ?」


 あの叔父さんが?


「ママの事が好きで好きで堪らない気持ちが溢れ出していたわ。でも……奴らに拐われたのね。一年ほど行方不明になって……帰ってきた時にはボロボロでね……」


「……うん」


「それからしばらくして真葵ちゃんがこの町に来たの。すぐに小田さんとママの子だと分かったわ」


「……私がママに似ていたから?」 


「そうね。それもあったけど……真葵ちゃんを大切に大切に育てている小田さんの姿を見て……そうなんだろうなって。……赤ちゃんの頃から育ててくれたパパに気を遣って『お父さん』と呼べないのね?」


「……うん」


「後悔しないようにね?」


「……うん」


「じゃあ次は、おばさんの話をするわね」


 毎日朝夕『わんわん』の散歩をしているおばさんが話し始めた。

 でも夏はアスファルトが熱くなるから早朝に散歩をしているって言っていたような……

 時々話す事はあったけど挨拶程度だったよね。


「『わんわん』のおばさん……」


「そうよ。『わんわん』の名前は孫がつけたの。まだ二歳だった頃に……ちなみにいつも散歩をしている『わんわん』はこっちに引っ越してからお迎えしたの。同じ名前をつけたのよ」


「そうなんだね……」


「……拐われたのは、その孫なの。今はもう二十八歳になったわ……」


「二十八歳……」


 私と年が近いんだね。


「孫は十四歳の時に拐われたの。塾に行ったきり帰ってこなかった……警察に知り合いがいてね……上からこれ以上調べるなと言われたって……」


「そんな……」


「そして……誰かに見張られている事に気づいたの」


「『奴ら』……?」


「初めは孫を拐った犯人が接触してこようとしているのかもと思ったの。でも全然その気配がなくてね……孫は私と娘と三人暮らしだったの。娘も私もシングルマザーでね。娘は……突然いなくなった息子……そして見張られる日々に心が耐えられなくなってしまって。今は『奴ら』の用意した病院に入院しているわ」


「病院に……娘さんの体調は?」


「毎日お見舞いに行っているわ。『奴ら』は私が小田さんの近くに住む為にこの町に引っ越したいと知ると、娘を近くの病院に転院させてくれたの。そして……知らない場所で独り暮らしを始めた私に子犬だった『わんわん』を連れてきたの」


 おばさんが寂しくないように『わんわん』を連れてきたっていう事?


「……『奴ら』はおばさんが引っ越したいってどうして分かったの?」


「あぁ……それは……そこにいる一人が『奴ら』だからよ」


「え? そこにいる男性の事?」


 壁際に立っている二人の男性の内の一人?


「彼はよほどの事がない限り話さないの。独りで暮らしている私を心配して……こっちに引っ越してからは一緒に暮らしているの。小田さんの事も彼から聞いたのよ」


 そういえば保護対象者と一緒に暮らしている『奴ら』もいるっておじさんが言っていたっけ。

 仲良しの夫婦みたいに見えるけど……

 おばさんのお孫さんを拐ったのは正規の団体なのかな?

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