叔父さんから語られた話は真実? (8)
「……叔父さんはその駿河の声に勝ったの?」
「葵を助けたい。その一心でなんとかな……」
ママを助けたくて怖い声に勝ったの?
「じゃあ……鈴木さんはその声に負けた……?」
「鈴木を何度か見かけた事があった」
「……え?」
「祖父母を訪ねてきた鈴木をな……」
「……そう」
「どこにでもいるような普通の子に、訳の分からない大量の薬を使い無理矢理覚醒させようとする……鈴木を騙している『奴ら』は誰一人生き残れないだろう」
「狩野さんが……それをするの?」
「実際やるのは暗殺部隊だがな。話を戻すか……」
「……うん」
「駿河の記録は厳重に保管されていたらしいが、戦争の度重なる空襲で焼かれてしまったようだ。別に保管されていた亡骸は無事だったようだがな」
「……その時一緒に焼かれちゃえばよかったのに。そうすれば変な薬をその亡骸から作る事はなかった……」
「いや、今はもう駿河の亡骸は無い。大昔の亡骸だからな。さすがに腐って使い物にならないだろう」
「……え? 今でも駿河の亡骸の何かを使って覚醒者を作り出しているんだよね?」
「正確に言えば駿河の末裔の中にいる覚醒者の亡骸だな。薬を使わずに覚醒した者の亡骸だ」
「なに……それ……じゃあ叔父さんも……いつかは……」
「だろうな。死体を使われるはずだ」
「そんなの嫌だよ!」
「俺だって嫌だ。死んだ後に身体をいじられるなんて最悪だ」
「……そこまでして駿河を復活させたい理由は何?」
「さあな。俺は偉い奴の考えなんて知らないし知りたくもない。だが……駿河は人間兵器だ。普通に暮らす人間のように見えて飛行機にも乗れて、ある程度の地位を与えれば各国要人にも会える」
「まさか……」
「日本は戦争をしてはいけない。だが戦争なんて必要ないのさ。完全体の駿河がいればな」
「そんな事の為にこんな酷い事を?」
「偉い奴の身内はピックアップされないからな。結局は他人事だ」
「……自分勝手過ぎるよ」
「そう考えると……俺と真葵以外は皆敵なのかもしれないな」
「皆……敵?」
「もし真葵が覚醒したら死後に身体を使われる……だが偉い奴がこのくだらない実験をやめれば俺達は穏やかに暮らせてピックアップされる人間もいなくなる」
「……叔父さん?」
「ある意味狩野も敵ってわけだ。俺らと偉い奴を繋ぐ者だからな。狩野が真葵を守るのは、いつか覚醒するかもしれないからだ。駿河の末裔の俺達が覚醒するのは、薬を使われて覚醒するのとは次元が違う」
「……叔父さん以外は皆……敵……」
「利用できる奴は利用しろ」
「……え?」
「狩野も『奴ら』も俺と真葵を傷つけられない。引き出せるだけ情報を引き出して……いずれ偉い奴らを皆殺しにしてやる」
「……! 叔父さん……」
「俺は……真葵に俺と同じ道を歩ませたくない。俺が変える……真葵が誰にも追われず穏やかに暮らせる世界を作ってみせる」
「叔父さん……それって危ない事なんじゃ……」
「二人だけの秘密だ……」
「叔父さん……」
大丈夫なのかな?
失敗したら大変な事になりそうだよ。