叔父さんから語られた話は真実? (6)
「いや、葵の存在は厳重に隠されていた。狙われたのはもう一人の覚醒者だ」
叔父さんが真剣な表情で話している。
他の覚醒者も同じ施設にいたんだね。
「もう一人の覚醒者?」
「酷い混乱の中、俺は葵をなんとか連れ出した。だが施設は壊滅状態になってしまった。他の施設に葵を預けるわけにはいかなかった。葵の存在を知られればどんな酷い実験をされるか……」
「それで叔父さんがママと暮らす事に?」
「……今思えば……」
「……え?」
「あぁ……これは俺の考え過ぎかもしれないが……襲撃は事実だった。だが……葵と俺は愛し合うように仕組まれていたのかもしれない」
「それって……どういう……」
「俺をあの施設に誘ったのは……俺が駿河の子孫だと知っていたからなのかもしれない」
「……まさか……ママと叔父さんに子供を産ませる為に?」
「もちろん強制ではなかった。だが……厳重に隠されていた葵に自然な形で何度も会っていたのは事実だ。今考えればおかしな事ばかりだった。下っぱの俺が葵に簡単に会えるはずがないからな」
「……叔父さんは自分が駿河の末裔だって知っていたの?」
「いや。自分が普通ではないと知ったのは葵を助け出した時だった。襲撃してきた『奴ら』に葵を見られそうになって、そいつの腕を掴んだら……その腕が黒くなり……そうだな……黒くなったバナナのようになった」
「バナナ?」
「グニャグニャして……掴んでいる部分から下が、もげ落ちた」
「……それが駿河の力?」
「分からない。だが……駿河が本当に能力者だったとしたらそうなのかもしれない。他に考えられないだろう?」
「駿河は頭がいいだけじゃなくて精神破壊と身体を腐らせる事ができた? 身体破壊と……精神破壊……?」
「それも俺には分からない。その後、俺は親父を頼ってこの地に来た。施設を建て直す間、一般人に紛れて暮らすようにと施設長に言われてな」
「一般人?」
「幸い葵の事は他の施設や団体にはバレていなかったから、初めのうちは穏やかに暮らせていた」
「初めのうちは……?」
「葵を助け出した時の俺の駿河の力を非正規の『奴ら』に見られたらしくてな……」
「……え?」
「ピックアップされて薬を使われた人だと誤解されて俺は拐われたんだ」
「そんな……」
「お前が『パパ』と呼ぶ駿河と、埼玉に一緒に行った駿河。他にも二十人近くが葵を守っていた。だから俺が拐われても葵は安全に暮らせる事は分かっていた」
「……叔父さんは大丈夫だったの?」
「人体実験……か? そうだな……かなりきつかった。だが……一年ほど経つと狩野が率いる暗殺部隊が攻め込んできた……のか? 俺は薬で朦朧としていたからよくは分からないがな」
薬で朦朧?
なんて酷い事を……