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鈴木さんは怖いくらいに冷静だ

「……え? 叔父さんがダンディ?」


 鈴木さんは目が悪いのかな?

 あのだらしない叔父さんがダンディに見えるなんて……


「叔父様は私とバーで会っていた事を隠そうとしませんでしたか?」


「……どうしてそれを?」

 

「あの時の派手な女性は、私に名刺を渡してきました。そして数日中に探偵事務所に会いに来て欲しいと。その名刺には『小田真葵』と書いてあって……私は小田さんが二十二歳の女性だと調べていたのですぐに嘘だと分かりました。その後叔父様が慌てた様子で現れて、女性を牽制するようにしていて……これ以上女性に話させたくないように見えました」


「叔父さんが牽制していた?」


「今思えば小田さんに真実を知らせたくなかったのでは? このまま何も知らずに穏やかに過ごして欲しかった……そんな感じでしょうか」


「叔父さんが……」


「そんな叔父様が小田さんを一人で来させたという事は……これ以上動けば自分が消されると考えたからでしょう。小田さんを守る為にはまだ死ぬわけにはいきませんから」


「……!」


 確か叔父さんも同じ事を言っていたような……

『奴ら』は本当に危ない集団なんだ。


「『彼ら』には人質は一人いれば充分ですから」


「人質?」


「『駿河真葵さん』……十一年前ワイドショーを騒がせた父親誘拐事件唯一の目撃者」


「……! どうしてそれを」


「……叔父様に引き取られて名字が変わったんですね」


「鈴木さん……あなたは……一体……」


「……私もつい最近名字が変わったんです」


「……え?」


「木村……」


「え?」


「私は一か月前までは木村だったんです。両親が離婚して鈴木になりました」


「木村……さん?」


「今ワイドショーを賑わしている『木村次郎』の娘……と言えば分かりますか? あの時SNSの鍵が外れて、また騒ぎになってしまいました。マスコミが内容をスクショしていて……父方の祖父母はかなり叩かれているようです」


 ……!?

 木村次郎の娘!?


「じゃあ……身体が弱かったっていう?」


「あれは私の兄です」


「お兄さん……?」


「はい。木村次郎には二人の子供がいたんです。あ……公園に着きましたね」


「え? あ……うん。うわぁ……広い公園だね」


 すごく綺麗に整備されている公園だ。

 家の近所にある錆びた遊具しかない公園とは大違いだよ。


「あの池の向こうにある木陰に座りましょう(小田さん……『彼ら』はあの木陰の近くで既に待っているはずです)」

 

 横を歩く鈴木さんが小声で話し始めた。 


「(え?)」


『奴ら』が公園で待っているの?


「(さっき、門で私がそう話したのを聞いて先回りしているはずです)」


「(先回り?)」


「(でも、それは私の見張りです。小田さんの見張りはこの辺りには詳しくないはずですから、今も私達の後ろを歩いてきているかと……)」


「(後ろを……?)」


「(振り向いたらダメですよ?)」


「(あ……うん。鈴木さん……毎日こんな風に暮らしているの?)」


「(もう慣れました。それに『彼ら』は、ほぼ接触してこないし……空気みたいな存在だと思うようにしました)」


「(空気……)」


「(『彼ら』は私達を生かす為に存在しています。車に轢かれそうになった時には助けてもらう事もあったようです)」


「(……え?)」


 あったようです?


「(彼らが望まない時には……私達は死ねないらしいですね)」


「(……何それ。どういう事?)」


「(小田さんも同じですよ。『彼ら』は最強のボディーガードであり、私達を殺す暗殺者でもあるんです)」


「(……意味が……分からない……)」


「(親切だと誤解して心を許さないでください。少し前……勘違いしたこちら側の人間が消されました)」


「(……え?)」


「(彼女は二人の内の一人だったんです)」


「(二人の内の一人?)」


「(簡単に言えば小田さんと叔父さんのような感じですね。拐われた小田さんのお母様から見れば娘と兄……『切り札がふたつある』状態です)」


「(人質……)」


「(人質? 面白い考えですね。私から見れば拐われたのは兄なのに、普通に暮らしている私達が人質なんて)」


「(『奴ら』に、どっちか一人が生きていればいいと思わせたら……叔父さんは消されるの?)」


「(……それを決めるのは『彼ら』ですから私には分かりませんが……消されるのは……叔父さんでしょうね)」


「(……そんな)」


「(消された彼女は……『彼ら』の一人に恋をしました)」


「(恋?)」


「(先程話した、轢かれそうになった車から守られたのは彼女でした)」


「(鈴木さんの話じゃなかったんだね)」


「(彼女は全て知っていたのに……消されるのは自分ではなく母親の方だと思い込んでいたんです。自分は『彼ら』の一人に愛されているから……と)」


「(愛されている……?)」


「(『彼ら』の一人が彼女に、まるで恋人であるかのように接していたんです。ですがそれは私から見てもただの暇潰しというか……そんなある日……彼女が消されました)」


「(……え?)」


 鈴木さんは怖いくらい冷静に話すんだね……

 

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