叔父さんから語られた話は真実? (5)
「じゃあ……えっと……狩野さんを疑うみたいで悪いけど、叔父さんはバーで偽者の私と……えっと……」
あまり狩野さんを悪く言うとまた叔父さんに怒られちゃいそうで怖いよ……
「ああ。狩野が、鈴木と俺と偽真葵が会っていたのを真葵に話した事か?」
よかった。
怒られなかった……
「……うん。叔父さんは私には内緒にしたかったみたいだし……」
「狩野にはずっと話していた。真葵には何も知らないまま過ごして欲しいってな……それなのに真葵に話しやがって……」
「狩野さんには考えがあったんでしょ? でも三十代くらいの派手な女性はどうして鈴木さんに私の偽名刺を渡したの?」
「その偽真葵も狩野と同じ所属の奴だ」
「どうして私の振りなんて……鈴木さんはバーにいた時点でその女性が偽者だって分かっていたらしいよ?」
「その辺りは俺には分からん。狩野が帰ってきたら本人に訊け」
「狩野さんは帰ってくるの?」
「狩野の役目は真葵を守る事だ」
「……え?」
「両親ともに覚醒者……そして駿河の末裔であり葵の娘……」
「ママの娘……?」
「葵は……はぁ……」
「叔父さん?」
「偽の住所を教えられた商業施設……その最上階は……実験施設だったんだ」
「実験施設? 鈴木さんはママがそこで生まれ育ったって言っていたよ?」
「鈴木はそこまで知っていたのか……」
「ママは何か実験されていたの? 赤ちゃんの頃から?」
「……いや、その前からだ」
「……え?」
「両親ともに薬を使われ覚醒しなかった者……その間に産まれたのが葵だ」
「それって……どういう……」
「葵の両親は恋愛結婚の末、子を授かった。だが……それは仕組まれた事だった。二人は『奴ら』にそうなるように導かれたようだ」
「そんな……」
「そして自然な形で妊娠し、産気づくと母親だけ拐われた」
「……それでママはその商業施設の最上階で産まれたの?」
「そのようだな。『繋ぐ者』がそれを知ったのは葵が二歳の頃だった」
「二年も……ママのお母さんは?」
「……亡くなったらしい。『奴ら』にとっては用済みの存在だからな」
「酷いよ……私のおばあちゃんなのに……」
「葵はすぐに助け出され今いる施設に連れていかれた」
「ママは大切にされているの?」
「ああ。今いる施設では大切にされている」
「商業施設では嫌な実験をされなかったのかな?」
「当時の『繋ぐ者』の話によればかなり大切にされていたようだな。何不自由なく暮らしていたようだ。だが……血液検査は頻繁に行われていたとも聞いている」
「血液検査?」
「膨大なデータが残されていたらしい」
「膨大なデータ……」
「葵は今いる施設に連れて来られてからも幸せに暮らしていた。十四年後、俺はその施設で十六歳になった葵と出会った」
「どうして幸せに暮らしていたママを連れ出したの?」
「……葵は常日頃から外の世界を見たいと言っていた。その頃の俺は葵がどんな存在であるかを知らなかった。だが……あの施設は葵を守る為にある事は分かっていたから連れ出しはしなかった」
「……うん」
「そんなある日……襲撃を受けた」
「襲撃? ママが拐われそうになったの?」
襲撃なんて物語の中だけの話じゃないんだね。