叔父さんから語られた話は真実? (1)
「叔父さん……?」
奥の部屋に二人で移動すると、叔父さんがすごく真剣な表情で見つめてくる。
「鈴木は……わざと『奴ら』の目につくように外で話したのか?」
叔父さんは、かなり怒っているみたいだ。
「私には『奴ら』に何を話しているか分からせる為だって言っていたよ? 自宅の室内だと何を話しているか分からないから勘ぐられるんじゃないかって」
「……『見張る者』に真葵の存在を知られたか」
「叔父さんは『見守る者』とは違う『見張る者』を知っているの?」
「……そうだな。真葵も話したんだ。俺も話さないと……」
「叔父さん?」
「……俺は……俺も……覚醒者だ」
「……え? 見守る者と見張る者じゃなくて?」
「鈴木は俺を『奴ら』の仲間だと思っていたんだろう」
「……うん。……俺は……覚醒したが……隔世遺伝だったらしい」
「叔父さんが覚醒者……でも隔世遺伝って?」
「両親ではなく、祖父母より以前の形質が現れる。なんて真葵にはこんな説明はいらないか」
「叔父さん……じゃあ私の知能が異常に高いのもそれが影響しているの?」
「さぁな。少なくとも俺は勉強が嫌いだ。真葵のバカみたいに頭がいいのは俺からの遺伝じゃないだろうな」
「……バカみたいに頭がいいって……悪口?」
「真葵……お前は両親ともに覚醒者……そんな事は今まで一度も聞いた事がない」
「そうなの?」
「『奴ら』は覚醒者を拐って『両親ともに覚醒者』……そんな子を作り出そうとした。……だが上手くいかなかった」
「そんな……酷いよ……でも、どうしてそんな事を?『奴ら』は覚醒者を作って何をしたいの?」
「……二百年に渡る鎖国を終える直前……日本はかなり危ない事をしていた」
「かなり危ない事? 鎖国の終わりって百七十年くらい前だよね?」
「本当にバカみたいに頭がいいな……その頃の日本はこのまま鎖国を続けるべきと考える者と今すぐ鎖国を終えるべきと考える者とに分かれていた」
「……うん」
「だが……鎖国を要求してきた者達の武力にはとても敵わないという事は誰もが分かっていた。その頃日本には……」
「日本には?」
「……恐ろしい男がいた」
「恐ろしい男? それって?」
「……駿河」
「駿河?」
「……俺達の祖先」
「……え?」
「徳川家康が隠居した地としても知られている」
「……? うん。駿河は今の静岡県だよね?」
「家康と忍者の関係を知っているか?」
「確か服部半蔵の伊賀越えだっけ?」
「本当に何でも知ってるんだな……江戸時代、忍者は隠密と呼ばれていた。スパイ活動や探偵のような事もしていたようだ」
「でも……どうして今、忍者の話を?」
「駿河は忍者ではなかった」
「……? そうなの? じゃあどうして忍者の話をしたの?」
「駿河は……化け物だった」
忍者の話は?
ん?
今、化け物って言った?