叔父さんはため息ばかりついている
「叔父さん……遅くなってごめんね」
もっと早く帰ってくるべきだったよね……
だから叔父さんは怒っているんだ。
「そうじゃなくて……はぁ……」
おじさんを見てため息をついた?
「怒らないであげて。大変だったんだよ」
おじさんが庇ってくれた?
「大変って……何があった?」
叔父さんのこの感じ……
おじさんの言う通り、二人は前から知り合いだったみたいだ。
「……これからは一瞬も目を離したらダメだよ」
「……え?」
「見張る者がピヨ……真葵さんの存在に気づいたんだ」
「ピヨ? 真葵の存在に気づいたってどういう事だ?」
「それは真葵さんから聞いて」
「はぁ……お前も知ってるだろう。真葵はズレてるんだ。しかも勘違いばかりして突っ走る。お前の口から聞かせてくれ」
「……確かに真葵さんはアレだよね……」
「ちょっと!? 二人とも酷くない!?」
事実ではあるけど……
「とりあえず中に入ろう」
叔父さんに促されて探偵事務所の中に入ると……
あれ?
鈴木さんのおじいさんとおばあさんと、畳屋のおじいちゃんがいる?
それと……
時々挨拶する、犬の散歩をしているおばさんと……
スーパーのレジのおばさん?
あとは知らない男性が二人……
「あ……えっと……」
皆、深刻な表情をして私を見つめている?
「真葵ちゃん……無事でよかった」
畳屋のおじいちゃんが抱きしめてくれた?
「えっと……おじいちゃん?」
「約束したよね。帰ってきたら話せる事は話したいって……」
「……うん」
「真葵ちゃん……真葵ちゃんはおじいちゃんの孫なんだよ」
「……え?」
畳屋のおじいちゃんが私のおじいちゃん?
「はぁ……その通りだ」
叔父さんがまたため息をついている?
「叔父さん? これって……」
「初めから話す……とりあえず座れ。駿河もだ」
「分かったよ……」
え?
今、おじさんを『駿河』って言った?
パパと同じ名字……
「真葵……こいつは駿河……真葵の以前の名字と同じだ。実は……真葵が『パパ』と呼ぶ男は……」
「待って……叔父さん……」
「……真葵?」
「パパは……私の父親じゃないんだよね……」
「……! 駿河に聞いたのか?」
「……ううん。鈴木さんに聞いたの……」
「……それは……私達の孫の……事?」
鈴木さんのおばあさんが驚いたように呟いた……
「叔父さん……ここにいる皆が……家族を連れ去られた切り札なんだね」
「……! 真葵……」
叔父さんがかなり驚いた表情になった。
ここまで知る事になるなんて思っていなかったんだろうな……
「私が鈴木さんから聞いた話を……全部話してもいい? もしかしたら話したらダメな内容もあるかもしれないけど……」
「……いや。話してくれ。真葵が埼玉に行っている間に話していたんだ。全てを共有しようとな……」
「全てを共有?」
「俺達は近くに住んではいるが、お互いの事を深くは知らない」
「そうなの?」
「ここにいる皆は……真葵や俺の『奴ら』との過去を詳しくは知らないんだ。話せば新たな問題に巻き込んでしまう可能性があるからな」
「……畳屋のおじいちゃんは……私が孫だっていつから分かっていたの?」
「……初めて真葵ちゃんがこの町に来た時からだよ。すぐに分かったよ。真葵ちゃんはお母さんにそっくりだからね」
「ママに?」
私はパパ似じゃなかったんだね……
「……真葵ちゃん……落ち着いて聞いて欲しいんだ……」
「私の父親の事だよね?」
「あぁ……そうだね。真葵ちゃんの父親……おじいちゃんの息子の事だよ……」
「私の父親は……叔父さん……なんだよね?」
色々な事を教えてもらえるまで時間がかかると思っていたけど……
こんなに早く話してもらえるなんて……