鈴木さんはもう助けられないのかな?
叔父さんに電話すると探偵事務所の窓が開く。
「あ……やっぱり叔父さんだ。じゃあ……さっきまでの話を全部叔父さんに聞いてもらうね。おじさんは、これからどうするの?」
あれ?
叔父さんが窓から見えなくなった。
「そうだね。おじさんはもうすぐ相棒と交替の時間だから、施設に帰って施設長と話してくるよ」
「うん。ありがとう……」
「大丈夫だよ。おじさんが所属している施設はしっかりしているからね」
「……うん」
「あ……そうだ。おじさんの相棒の容姿を伝えておくよ。『見張る者』と間違えないようにね」
「相棒? おじさんと一緒にわたしを見守っている人?」
「ヒョロヒョロでツクツクで口が悪い……だよ」
「……それって……何の生き物?」
「あはは! 見れば分かるよ。じゃあね……おじさんはここで君を見守っているよ。交替の時間になったら紹介するからね」
「おじさん……」
「ん? 何かな?」
「今日は朝から走らせてごめんね」
「おじさんは全然走れなかったから歩いていたのと同じだよ……」
「ううん……汗ビショで私を守ろうとしてくれていたよ?」
「……君は今から……辛い真実を知るかもしれない。おじさんはそれが心配なんだ。でも……君が知らないだけで……恐ろしい事は行われていた」
「……うん」
「あの女の子は君の存在を見張る者に見せた。きっと今頃あいつらは君の事を調べているだろう」
「……鈴木さんは……大丈夫かな?」
「君は……優し過ぎるよ。命の危機が迫っているかもしれないんだよ?」
「……鈴木さん……言っていたの」
「……え?」
「『助けて』って……すごく小さな声で……」
「『助けて』?」
「その時は拐われたお兄さんを助けてって言っていると思ったの。でも……本当の鈴木さんが言ったのかも……」
「本当の……あの子が?」
「今からでも助けられないかな?」
「……もう手遅れだよ」
「本当に?」
「……え?」
「おじさん……施設長? っていう人に話してもらえないかな」
「施設長に?」
「鈴木さんを守っている人達は機能していない。鈴木さんを守っている人達はお兄さんを保護している団体なんだよね?」
「そうだよ」
「その施設の人に、鈴木さんが酷い目に遭わされているかもしれない事を話して欲しいの」
「その件はきちんと伝えるよ。もしかしたら見守る者が見張る者に懐柔されたのかもしれないからね」
「鈴木さんを助けたい。もしかしたら私とおじさんの考え過ぎで、鈴木さんは何もされていないのかもしれないけど……もし本当に酷い目に遭っているのなら助けないと」
「……君は……本当にあんな子を助けたいの?」
「え?」
「おじさんはあの子が嫌いだよ。君を苦しみの中に引きずり込んだあの子を赦せない」
「おい! 真葵!」
え?
叔父さん!?
いつの間に……
「叔父さん……ただいま」
「ただいまじゃないだろ!」
かなり怒っている……
夕飯抜きだったりして……
さっきもっと食べておけばよかった。