おじさんから聞くママの話に胸が苦しくなる……
電車から降りるとおじさんと二人で探偵事務所まで歩く。
「君はこれからはなるべく探偵か畳屋のおじいさんと行動を共にするんだよ?」
隣を歩くおじさんが心配そうに話してくれているけど……
やっぱり私は危ない状況なのかな?
「……うん。気をつけるよ……」
「大丈夫。おじさん達が絶対に守るから」
絶対……か。
「ねぇ、おじさん」
「うん? 何かな?」
「もしも……もしもだよ?」
「うん?」
「叔父さんが……私の父親だとして……」
「……うん」
「名乗らないのは……意味があるんだよね?」
「……そう……だろうね」
「……鈴木さんはね? 叔父さんがママを施設から救出した事を、叔父さんには話さないで欲しいって言っていたの」
「……え? そうなの?」
「叔父さんが傷つくからって……」
「うーん……今のあの女の子にはそんな感情はないと思うけど……」
「私……叔父さんに話してもいいのかな?」
「……話すべきだよ」
「……叔父さんは傷つかないかな?」
「……隠し事をされている方が傷つくんじゃないかな?」
「……そう……だよね」
やっぱり話した方がいいよね。
「あ……探偵事務所に明かりが見えるね」
「うん」
「でも……中にいるのが本当に探偵かどうかの確認だけさせてもらうよ?」
「……え?」
「これからは外出先から家に入る時も事務所に入る時もおじさん達が確認する事になる」
「私の存在が知られたから?」
「……君のママは覚醒者だ。覚醒者から子供が産まれるのは珍しいんだよ。どうやってあの女の子がそれを知ったのかは分からないけど……」
「……覚醒者から子供が産まれるのが珍しい? 鈴木さんは非公認の団体から聞いたはずだよね……それなのにその団体は周囲にそれを隠している? どうしてなんだろう」
「君のママは君を産んですぐ見張る者に追われた。それで君を守る為に、君が『パパ』と呼ぶ人に託したんだ。でも妊娠が周囲にバレないように上手くやっていたから君の存在を知る見張る者はいなかったはずだよ。産院ではおじさん達が用意した他人名義の保険証で出産したし……うーん……どこから情報が漏れたのか……」
「役所に出生届を出しに行った時に拐われたって聞いたけど……」
「あ……そうだったんだね。実際は役所の近くある武器屋に行っていたんだよ」
「武器屋? 狩野さんも今から武器屋に行くって言っていたよ?」
「狩野さんが……そう。武器屋っていうのは武器を売っているんじゃないんだよ」
「じゃあ何を売っているの?」
「情報だよ。最近消された保護対象者とか……覚醒者の氏名とかね。あとは情報を売る事もできる」
「情報が筒抜けっていう事?」
「残念ながらお金さえ払えば大体の事は分かるはずだよ。君のママは探偵の安否を気にしていたんだ。だから君を連れて武器屋に行ったんだよ。産まれたばかりの赤ん坊を一人で家に留守番させられないからね……」
ママは私を一人で育てていたんだね……