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隠しきれない気持ちと鈍感過ぎる真葵(1)

「俺達はたぶん元々鈴木真理の中にいたんだ。それが表に出てきただけなんだ。だから鈴木真理の中に戻って、もう出てこられなくても……ずっと……俺は真葵を見守る……」


 真理ちゃんが私の腕の中で小さく震えながら話しているけど……


「……私を……見守る?」


「俺はあの施設で作り出されてから……聞こえてくる他人の心に傷つき続けてきた」


「……真理ちゃん」 


「でも……真葵だけは違った」


「……それは違うよ。私は……そんな立派な人間じゃない……」


「……真葵……俺は真葵の事が大好きだ。嘘つきしかいない世の中……だけど……真葵はその中で真っ白に咲く一輪のユリみたいだ」


「一輪の……ユリ?」


「凛として、見る者を惹き付ける……俺……作り出されてよかった。消えるのは嫌だけど……真葵に会えたから……」


「……真理ちゃん」


 ずっと胸が冷たいままだ……

 これは何?

 もう真理ちゃんに会えなくなると思うともっともっと冷たくなっていく。

 私……

 真理ちゃんに会えなくなるのが『辛い』の?

 それとも『悲しい』?

 ……分からない。

 分からないよ……

 


 二時間後___


「真葵! おはよう! ん? 襖に新聞が貼ってあるぞ?」


 お兄ちゃんがコンビニの買い物袋を持ちながら居間に入ってきた。

 おじさんと交替の時間になったんだね。


「じゃあ、俺は帰ろうかな。ぴよたん、また明日ね」


 こたつでみかんを食べていたおじさんが半袖短パンのまま施設に帰ったけど……

 もうすぐ十二月なのに寒くないのかな?


「お兄ちゃん、おはよう」  


 昨日は『八つ裂きにされる』みたいに言っていたけど、いつも通りみたいだ。


「ほら、真葵。アイス買ってきたぞ」


「アイス? うわ! 高いやつだ!」


 アイスがふたつと……

 あれ?

 猫のおやつ?


「これからは毎日アイスを買ってきてやるからな! って……真理はどうして真葵に膝枕されて寝てるんだ?」


「耳掃除をしていたら寝ちゃったの。塾の仕事が大変なのかな?」


「耳掃除!? (……俺も……して欲しい……)」


「……え? 何? 聞こえなかった」


「……なんでもないっ! 真理の分のアイスもあるけど……寝てるなら冷凍庫に入れないとな」


「真理ちゃんの分もあるんだね。ありがとう」


 もうひとつはお兄ちゃんの分かと思った……

 いつも競い合っている真理ちゃんの分まで買ってきてくれるなんて、やっぱりお兄ちゃんはお金持ちなんだね。


「ぷっ!」


 ……?

 こたつに入っている真理ちゃんを見守るおじさんが吹き出した?

 どうしたのかな?


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