鈴木さんに対する違和感?
「おじさんの役割は君を守る事だからね。あの女の子とは関われないから危害は加えないよ。安心して」
おじさんが優しく微笑みながら話している。
鈴木さんが教えてくれた事を話しても大丈夫かな……
「ママを助け出した『今はこちら側の人間』が叔父さんだったって。あと、パパは私のパパじゃなくて……『奴ら』だったんだって……」
「どうしてそんな事を……辛かったね。君がどれだけ父親を大切に想っているかも知らないで……」
「おじさん……」
「そこまで知ったなら……おじさんから話そう。君の叔父さん……探偵は……きっと今は話してはくれないだろうから。モヤモヤしながら話してくれるのを待つのは嫌だろう?」
「……ううん。私は待つよ」
「……え?」
「こんな言い方をしたら……よくないけど……さっき……鈴木さんが怖かったの」
「怖かった?」
「知り合いの女の子が殺された事とか……鈴木さんの父親が殺された事を……何て言うか……感情無く話していて……それに『これ以上は話せない』って言いながら辛い事を話して、私の苦しむ顔を見て喜んでいるように見えたの……」
「……! そう……」
「叔父さんは、私に鈴木さんに会って来いって言ったけど……こんな話を聞かされるとは思っていなかったと思う」
「……そうだね。おじさんも驚いたよ」
「家に帰って叔父さんに全部話してみるよ。それで叔父さんから真実を聞ける日まで待ってみる。あ、もちろんおじさんを信じていないとかそういうのじゃないからね?」
「……そうか。そうだね……」
「おじさん……」
「ん?」
「鈴木さんから……」
「ん? さっきの女の子?」
「……うん」
「どうかしたの?」
「……私を変な子だって思わない?」
「……? 思わないよ?」
「変な匂いがしたの」
「変な匂い?」
「うん……この前はしなかった匂い。鈴木さんと小声で話していた時、私達はすごく近くを歩いていたでしょ?」
「そうだったね」
「あ……口臭が酷いとかそういう悪口じゃなくて……何て言うか……腐っている匂い?」
「腐っている匂い……?」
「上手く言えないんだけど……」
「……もしかしたら」
「……え? 何か分かったの?」
「おじさんの先輩から聞いた話なんだけど……」
「……先輩から?」
「あの女の子から『覚醒』……とかって聞かなかった?」
「覚醒? あ……うん。聞いたよ? でも詳しくは……ただ覚醒って言葉を聞いただけ……」
「そうなんだね……」
「鈴木さんのお兄さんが幼い頃、病院で勝手に変な治療をされたとか……」
「……その治療をさっきの女の子も受けたの?」
「え? そこまでは話していなかったけど……」
「もしその治療をあの女の子も受けていたら……」
「おじさん?」
「うーん……さっきの探偵とママの昔話は探偵から聞くとして、今の覚醒の話はおじさんからしよう」
「うん……」
「その治療っていうのはね……日本国民をランダムにピックアップして特殊な薬を使うらしいんだ」
「ランダムに? そんなの聞いた事がないよ?」
「そうだね……一部の人しか知らないから」
「警察は?」
「うーん……日本のすごく偉い人達がやっている事でね。普通の警察は知らないんじゃないかな?」
「普通の警察は知らない……?」
鈴木さんも同じ事を言っていたよね。
「だから『家族が誘拐された』って通報してもそれがピックアップされた人だったら捜査をしている振りをして時間が経つのを待つんだ」
「そんな……じゃあパパも?」
「そこら中にある防犯カメラをリレー捜査すればよほどの事がない限り見つかるはずだよ? あの時、君が通報したから警察はすぐに駆けつけていたしね。上からストップがかかったんだろう」
「……どうして……そんな酷い事を?」
「……それはおじさんも知らないんだ。でも、君のママは穏やかに暮らしているから安心してね。おじさん達の施設には酷い事をする人はいないから」
「酷い事?」
「……人体実験……とか……薬がどれだけ効いてどう作用したのか……とか?」
「……怖いよ。そんなの絶対にしたらダメだよ」
「昔……ある人が言っていたよ。『人はマウスを使って実験をする。そのマウスはかわいそうじゃないのか? 人はダメでマウスはいいなんておかしい』とね」
「……それは……確かにそうだけど……」
「もし……次にあの女の子に会ったら今の質問をしてみて欲しいんだ」
「マウスと人の話を?」
「それで……もし『マウスじゃなくて人で試せばいい』とか『君の身体で試させてくれ』とか……あの女の子が自傷行為をしたりしたら……覚醒に失敗したと考えてもいいはずだよ」
覚醒に失敗……?