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はじめましてお兄さん。2

今回からはほっこりしたものに、なればいいなと思っています。

よろしくお願いします。



別居。

世間的には良くあるそうで、その時までふーんと知識として入れるレベルで。

きっと、自分達には関係ない事だと思っていた。

離婚をしようにも、俺が早まったせいで証拠が少なく、千秋ももう相手に会っていないように思えた。

展開が早く思えるだろう。

あの日、すぐ千秋が出て行ったからだ。後で荷物を取りに来るとメールに残して。

うまく話し合いもできず、顔を合わせる時間もなく。

無駄な時間だけが過ぎていった。


親権だって母親の方が有利だと聞く。そりゃそうだ。命をかけて産んでくれたんだから。

…だが、千秋が出ていく形で別居をし始めて半年のこの頃。

実家に戻り、実家暮らしとなった千秋はその男と正式に付き合い始めたらしく、元々とは言え、凪の事は全て俺に任せるようになっていた。

男と正式に付き合っていると知ったのも、自分からもう離婚するんだしと、わざわざ言って来たからだ。幸輔も他に好きな人いるんでしょ、と。その時も喧嘩になった。

俺はただの都合の良い男じゃ無い。

一言でも叫びたかったし、叫んでみたかった。

叫ぶべきだった。

叫ぶ権利があったのに。


ベランダで、近所迷惑にならないようにと口をパクパクと叫んだ。


このベランダだって、新婚の時花火がよく見えるねと千秋と話していた場所だった。


最初のうち、凪は千秋が連れていった。

けれど一度、凪は俺に会いたいと駄々をこねた。

それを拒否した千秋に拗ね、小さいながら家から居なくなった事があり。

千秋は怖くなったのか、凪が言うたび会いに来てくれていたが、いちいちこちらに行くのが面倒になったようで、とうとう凪を置いていくようになった。

どこかに監禁したり、1人で家に放置させたり。そういうことをしないと分かってはいたけれど、良かった。


そして今では、凪は我が家から通いの幼稚園への入学を控える、4歳へと成長していた。



ゆさゆさと体をゆすられている気がする…。

3月の15日。

今日は確か、日曜のはず。

「……凪。おはよう」

目のピントが合うように見えた、俺をゆすっていた犯人は、隣で寝ていたはずの朝から元気な凪だった。

「ん!!おはょぅとーた!」

とーた。と言うのは、前アニメのキャラクターが呼んでいた「とーさん」がカッコよく見えたらしく真似している俺への呼び名だ。

うまく言えないまま定着してしまっている。

「早いねぇ…。ぁ、トイレ行ったかな」

まだ6時だ。

ちょうど先週トイレデビューを済ませた凪は、おそらく頭がいいのだと思う。

「まだ!あっきょお!きょおとうすと!ふわふわの!」

「あぁ…そう言ってたねぇ…。分かった。でもぱぱもうちょっと寝てて良いかなぁ…」

トーストとは、昨日の夜テレビの番組で美味しいふわふわトーストの焼き方。をやっていたから、じゃあ明日の朝ねと約束した事だ。

でも確かあれは…最初からこねる方をやりたがっていたような。

「やーぁあ‼︎先食べる!きゅあるびー始まっちゃう!くわがたぁも!!はあやあく」

そう言うと、バブバフ音を立てながら俺のお腹の上に馬乗りで乗ってきた。

一瞬ゔっと驚き、その後、まだ軽いなぁ…。そう思った。

「プリティアか…あ、仮面ライターはビデオとったから大丈夫だよ。」

彼は男の子だが、可愛いものもかっこいいものも目がない。プリティアも、キュアルビーというキャラクターが可愛くて仕方がないのだと言う。

「なっちゃんりあるたいむがいい!!」

「どこで覚えてくるんだよそれ…」

「……。…っと、分かったよ。トイレ一緒に行こうか」

「ふふん。とーた起きた」

誇らしげに抱きついてくる凪に、自分の頭をわしゃわしゃ掻きながら答えた。

「おきたよぉ…。ふぁあ……」

あくびが止まらない。

後で二度寝しよう…。

ぺたぺたと重い足取りで洗面所に向かう。

「…ふぁ。…なっちゃん今日行きたいところある?」

歯ブラシを取り出し歯磨き粉を付けながらついて来た凪に話しかける。

歯ブラシとってと背伸びする凪に子供用の歯磨き粉を付けながら。

「んー。プリティアショー!」

はいどーぞ。ありあと。と会話をして歯ブラシを手放す。あーこの前行ったもんなぁと思い、スマホを取り出した。

「…やってないなぁ…次いつ来るかな」

スマホでイベントホームページを見ながら話す。

確かに今週は連休でもなんでもない。

「あ、なっちゃんがおほわれれはくるかな(襲われれば来るかな)」

「怖い事言うねぇ…。…っぺ。」

頭が切れるなぁ流石俺の子。

そう思いながら画面をスクロールした。

「…んー。あ。今度違う遊園地なら来るかもね」

洗面所の隙間から子供用の畳んであった台を開き、凪の前に置いて、とんとんと台を叩く。

「遊園地?なっちゃん行った事ある?」

凪は台の上に乗り、ぺっと、うがいをした後言った。

「無いねぇ。この前行ったのはおっきい公園だったから。」

凪が台から降りて、自分で台を畳もうとする。

「へぇ〜」

手を挟んだら危ないからと、凪にいいよ。と言って台を畳んで隙間にしまう。

「遊園地だとね、この前と違って観覧車とかジェットコースターとかあるよ。…あ、身長制限あるんだった…」

「かんらんしゃってなに?このまえ、うんと、この前ルビー戦ってたやつ?」

「うーん、あれとは違うかなぁ。」

プリティアであった車のタイヤが怪獣になるシーン。

凪はあれを思いついたらしい。

「ふーん。」

あまり興味なさげに、うとうとし始めながら言う。

「まぁるい、高いところまで行けるやつだよ。回るんだ」

「…!」

「でも…」

話を聞いて、一瞬ぱあっと目が輝いたかと思うと、凪はついに黙った。

「どうしたの凪」

「んーん」

「…そう?」

「うん」

「…眠い?」

「ちがう。」

「そっか。」

「うん、うんって、うんって言ったらとーた寝る気でしょ、らっきいって」

「うん…」

やっぱりこの子、頭良いッ…。

聞いて聞いてと言わんばかりのテンションで凪は言った。本当に眠いわけではないらしい。

「…あ、もしかして、遊園地嫌?」

「…」

黙りながら、凪はこくんと頷いた。

何か嫌になる理由があったかなと、首を傾げながら聞く。

「理由とかある?」

「りゆー?」

「なんでっ、って事」

俺はしゃがみ、凪の身長に合わせて凪の顔を見る。

「…、…幼稚園?と似てるから」

「幼稚園?」

「や、やっちゃんも行くって言ってたから」

「怖くないんだよ」

驚いた。幼稚園なんて、まだ話していなかったから。

自分の時、散々ぐずって幼稚園を拒否したと親から聞いているし、自分自身自覚があったから。

まず同じ幼稚園に通う子が居そうな公園に連れて行ってみて、友達を増やしてみて。それから友達に毎日会えるところだよって幼稚園を説明して。そう思っていた。

「…もしかして、この前公園行った時に?」

そういえば、その時の保護者のお母さん方と話した。

どこの幼稚園に通わせますか。

幼稚園の行事や、子供に兄弟がいる人の経験談等。

あいにく、子供園の子供達は住んでいる地域上同じ幼稚園の人が居なかった。

「やっちゃんのお母さんがね、なっちゃん強いから、1人でも幼稚園行けそうだって。」

「!…なるほどねぇ…、」

やっちゃん、というのは凪と同じ幼稚園に行く最初のお友達、柳沢陽やざわひろ

今時苗字であだ名とは珍しいと思うが…。

まだひろと言う名前を知らない凪が、

その場にいるママ友パパ友や年上の子供達が陽君の家族をまとめて言う際柳沢家やざわけと呼ぶのを聞いて、

「なっちゃんはなっちゃんだから、やっちゃんって呼んでも良い?」「?いいよぉ〜」と呼ぶ様になってしまったもの。

もしかしたら下の名前を知らないかもしれない。


「なっちゃん、1人で、行かないとなんでしょ?」

「…、うん。」

「とーたは?お仕事?ママは?居ないよ?」

「…うん。」

「なっちゃん1人?」

「やっちゃんが一緒に行ってくれるよ。」

「やっちゃん行ってくれる?」

「うん。パパもしばらく一緒に行くよ」

「しばらくって、いつまで」

「…まあ、なっちゃんが1人でも行きたいくらい、幼稚園が楽しい所になったらかな。」

「じゃあいい。とーたと一緒がいいもん。幼稚園行かない」

…ほらみろ、出た。


俺はしゃがんで凪と目線を合わせる。

「パパもね、幼稚園最初嫌いだったよ。」

「なっちゃんも嫌。」

「そうだねぇ。パパも嫌だった。」

「でもねなっちゃん、…なっちゃんは、簡単なお話と難しい話、どっちが良い?」

「難しい方」

拗ねるように、強がるように、凪は言った。

「…幼稚園の後って、小学校って所に行くんだ。人たくさん居てね、お友達沢山できるところ。」

凪は横を向きながらも自然と頷きながら熱心に聞いている。

「初めて小学校に行くときにね、初めましての人がたくさんいるんだ。でも幼稚園行っておくとね、小学校でお友達できやすいんだ。」

凪は頷く。

多分分かっていないけれど、頑張って理解しようとしてくれている。

喋っている自分自身も、何を根拠に、何を勝手に話しているのか、うまく理解できていないのに。

というか、せこい、話。

まるで正しい事を言っている様に聞こえるだけで。

「でも?ん?なんで?」

「たくさんお話しできるからだよ」

「みんなとしゃべっていろんなこと沢山知っておけば、いろんな人と喋れる。」

「?うん!」

「じゃあ知らない子とお話しするにはどうしたらいい?」

「えっと、なかよく…、する?遊ぶ?」

「合ってる。後お話しもするでしょう。一個の話しか分からないのに、違う一個のお話持ってる人と話せる?」

「んーと、は、話せない?」

「そうだね。」

「あっ!噛み合わないってやつ!」

「そうそれ。」

ふふっと凪が笑い、釣られて俺も笑う。

なんとなく分かった!!と、凪がはしゃぐ。

なんとなく、だなんて。凪は言葉を覚えるのが好きなのかもしれない。


「じゃあ幼稚園一回行ってみようか」

「えっ」

「バスにしようか迷ったんだけどね。お家から距離も近いし歩いて行こうと思ってたから。練習!」

「…いいの?」

「いいもなにも、丁度いく予定だったからね」

「それとも1人で行く?」

「っじゃあとーたと行く!」

「よし。」

それにしても、遊園地から幼稚園。

…似ている要素あるだろうか。


「…いつもも、なっちゃんだけ?」

外に出て一つ目の信号で凪が聞いた。

ボタンを押さないと動かない信号機で、背伸びで凪がボタンを押した後だった。

「ん?…あぁ。違うよ。いっつもとーたと一緒。危ないからね」

凪と歩いて行くなら、今まで自転車での距離を俺は会社までバスか電車で行かなければならない。

「やった!」

時間が少々ギリギリなのだ。

出費はかさむけれど…、仕方ない。

きっと年長さんくらいになれば、友達と行きたいと言い出すだろう。


「ここが幼稚園だよ」

白い柵を挟み、目の前の大きなグラウンドでちょうど園児が遊んでいた。

今日は日曜日のはず。

人数も数名で、預かり保育の子達だろうか。

「幼稚園…!…ふーん。」

凪は両手で柵を掴みながら、一生懸命中を見ている。

「ふーんて。どう?感想は?」

「ちょっと楽しそうです。」

そうキリッと、滑り台で遊ぶ子を見続けながら言った。

どうやら滑り台に心を奪われているらしい。

幼稚園限定に思える少し大きな手すりや網があったり、ボルタリングがついていたり。

「ふふ。そりゃあ良かったよ。」

急にませた口調になったなと思いつつ、帰りに公園寄ってあげようかなと思った。



幼稚園観察を5分ほどして、あっち行ってみようかと、手を繋ぎながら少し離れた公園を目指して歩き出す。


「…。ん。駄菓子屋さん?前来た時やってなかったのか」

古びてはいるが新めの…。

幼稚園を少し通り過ぎた所に駄菓子屋があった。

2分もしていないと思う。

信号もない。同じ車線だ。

「うわっ!凄い!お菓子だあー!!」

「あっちょ、凪っ‼︎」

パーっと目を輝かせ、凪が手を離して走っていく。

「まってっ」


こんにちはこんばんは。

倉松です。

今回のも貯めていた分の投稿です。

どうだったでしょうか。ここから動かしたいのですが…、、ネタがきれないことを祈るばかりです。

ゆっくり投稿していくと思います。よければお付き合いください。

おやすみなさい。

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