お弁当、温めますか? 大喜利しますか?
最近、悩み事が増えてしまった。
妹が家族分の弁当を作り始めたのだ。
何かに凝りだしたら際限が効かないタイプの妹は、普通の弁当が、あっという間にキャラ弁へと変貌していった。
最初は、ただの丸いおにぎりが、翌日にはサッカーボールに、更に翌日にはバスケットボールに、昨日はなんと、14ポンドの黒いボウリングボールになっていた。
そして、今日は遂に、ポケモンのモンスターボールになっている。
俺は、帰宅した妹に早速、要望を伝えた。
「普通の弁当にしてくれよ」
「普通ってなに?」
「ふたを開けた時に、食べようという気持ち以外の感情が沸いてこないヤツだよ」
「なにそれ?」
「『うわ!』とか『なんだこれ?』とか『凄いなぁ~』とか、そういう感情は弁当にはいらないんだよ。ただただ『いただきます』というセリフが素直に出てくる弁当のことだよ」
「そんなのつまんないじゃん」
「弁当に面白さなんか求めてないよ」
「味はおいしいんだからいいじゃん」
何を言っても無駄だった。昔から妹とはこんな感じだ。
翌日は、アンパンマンの顔のおにぎりになっていた。脱帽した。一口かじったら中身はシャケだったが、どういうわけか、味が全く感じられない。どうやら、俺の脳はバグってしまったらしい。
あまりに腹に据えかねた俺は、Xに投稿することにした。顔半分が食べられ、中身のシャケがはみ出した状態で、
『バイキンマンにやられました。ジャムおじさん、新しい顔を握ってください』
と投稿すると、たちまち30万人のフォロワー数が増えた。今まで友達の五人だけだったのに、とんでもない数だ。
翌日は、カオナシだった。顔半分をかじり、
『あ……あ……』
と投稿すると、更にフォロワー数が増えた。
更に翌日は、俵型のネコバスだった。車体をかじり、
『事件ですかっ!? 事故ですかっ!?』
『……分かりませんっ!!』
と投稿すると、50万人になった。
さて、今日は一体どういうお題で来るのか?
わくわくしながらふたを開けると、なんと我妻善逸の顔になっていた。
(プロの域だ……! 俺の大喜利では、とてもじゃないが太刀打ちできない……! 雷の呼吸、壱ノ型を俺は食らってしまった……)
仕方がないので、そのまま投稿したら、フォロワー数が100万人に達成した。
翌日は、ウマ娘のヒシアマゾンを、そのまま投稿することになってしまった。俺の大喜利は、もはや邪魔になっていた。
現在もフォロワー数は伸び続けている。
読んでくださって、ありがとうございました。
「小説家になろうラジオ大賞」の応募作品です。