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悪役令嬢っぽい子に転生しました。潔く死のうとしたらなんかみんな優しくなりました。

作者: 下菊みこと

「悪役令嬢に転生してる…」


天涯孤独な身の上だった『私』はブラック企業に就職すると、過労死であっけなく死んだ。


それなのに。


今世は記憶を思い出す限りどう考えても悪役令嬢な女の子に転生していた。


前世の記憶と今世の記憶を一気に思い出して私はてんやわんやだが、とりあえず整理しよう。


この悪役令嬢、親にも兄にも愛されずに妹ばかりが可愛がられて精神が歪みまくった末、妹を毒殺しようとしていた。いや、我がことながら可哀想。…可哀想じゃない?毒殺とか怖い?ソウダネー。


親や兄が妹ばかり可愛がる理由はズバリ『お姉ちゃんなんだから我慢しなさい!』


天涯孤独な身の上だった私が、そんな新たな理不尽を経験するとは思わなんだ。


そして親も兄も、もう妹も十六歳、私は十八歳になるのになぜまだ『お姉ちゃんなんだから我慢しなさい!』を続けているのか。謎だ。


ちなみに婚約者も妹に惚れている。私の性格が悪いからだそうだがその原因の一端はその女だぞ。


毒殺のために毒薬を買ったのはいずれバレるだろう。どうせどう転んでも最悪な人生だ、もう一回死んでやろう。


私は自ら、買った毒薬を飲み干した。


幸か不幸か苦しむ前に意識は途切れ、痛みを感じることもなかった。


いい毒だ、グッド!














何故か、私は死に切れなかったらしい。


親が泣く。兄が泣く。


妹と婚約者はどこか迷惑そう。


どうしてと責められたので、親も兄も妹ばかりで昔からずっと愛してくれなかったことを引き合いに出した。


ついでに妹がそれに乗じてわがままばかりで、私が我慢してきたことも引き合いに出した。


さらに、それで性格が悪くなったからって婚約者が妹に惚れたことも引き合いに出した。


さらに、妹が人の男だとわかっていながら婚約者を誘惑するのも気持ちが悪いと言った。


「…その、すまなかった」


絶句する面々の中で、先に謝罪したのは婚約者。


「そんな生活をしていたら性格が歪むのも当然というか、俺もそれに拍車をかけた側だし、というかなんかもう本当にごめん」


頭を下げる彼に妹が言う。


「どうしてリカルド様が頭を下げるの!?お姉様、リカルド様に謝って!」


「ごめんなさい」


「いや、謝らなくていい。リリー、俺なんで君が好きだったんだろうな。君の方がよっぽど頭おかしいのに」


「え」


「甘やかしまくったご両親には大変申し訳ないが、今からでもその性格を矯正した方がいい。俺もリリーのその性格に一役買ってしまったんだろうけど…婚約者もわがままを言って作らなかったとか、俺狙いだったんだろ?普通に引く。無理。なんで今まで好きだったのか本当にわかんない」


婚約者の言葉に今度は妹が絶句した。


次は兄が口を開く。


「ごめんな、ロゼッタ。お兄ちゃんが悪かった」


「…なんでお兄様までお姉様なんかに謝るの!?」


「お前は黙ってろ」


初めて兄に凄まれて妹は黙る。


「お兄ちゃん、今まで間違ってたな。ごめんな」


「謝られても…」


「だよな…」


兄は閉口する。


「私もごめんなさいね、ロゼッタ…」


「今まですまなかった…」


「さすがに私がもらって大切にしていた亡き祖母の形見のブローチを妹に壊された時まで『お姉ちゃんなんだから許してあげなさい』はないです」


「…本当にすまない!!!」


「ごめんなさい!!!」


「悪かった!!!」


頭を下げる親と兄、不機嫌そうな妹、祖母のブローチの件を聞いてドン引きしている婚約者。


これどう収拾つけよう。


「…まあいいや、とりあえず毒薬で死ななかったなら今度は飛び降りしてみるか」


私の言葉に顔面蒼白になる親と兄と婚約者を放置してベッドから降りようとするが、毒の後遺症かうまくいかない。


「と、とりあえず今は安静にしよう!な!」


婚約者に無理矢理元に戻される。


しばらく自力で自殺できそうにはない。


「自分で動けもしないくせに、自殺なんて口にして…かまってちゃんはやめてよね、お姉様」


「…リリー、お前はこれから田舎のお祖父様とお祖母様の元へ行きなさい」


「え?」


「お二人は再三リリーの根性を叩き直すからこちらに寄越せと言っていたの。こういうことだったのね…」


「え?え?お父様?お母様?」


妹は怒った兄に無言で首根っこを掴まれ退場した。


「…ともかく、まずはゆっくり休もう!」


「それがいいわね!」


「そうしよう!」


かくして私は不自由な状態で安静にするしかなくなった。












妹は本当に田舎に引っ込んだ祖父母に引き取られたらしい。


根性を叩き直されて毎日ピーピー泣いていると兄から聞いた。


あれから嘘のように親も兄も婚約者も優しい。


優しくされたところでなぁと思う。


今世の記憶と前世の記憶のせいで、両方の意識が入り混じった今の私は生きることに無気力だ。


身体も思うように動かないし、最悪。


自殺すらできないとか…。


そこまで思ってふと思う。


ブラック企業でワーカーホリックな時代の方がまだマシだったし、自殺じゃなくてそっちに走るのもいいなと。


私はそこから方針転換して、療養やリハビリを頑張った。


そして元気になると、結婚前だというのに婚約者のところにお邪魔した。


そして事務仕事を大量に請け負って働きまくった。


なんか無理しなくていいよとか大丈夫とか聞こえるけど気にしない。


仕事漬けになり、なんか変な達成感すら覚えて精神は安定してきた。


親も兄も婚約者も、優しくなったどころか心配までしてくれるが知ったこっちゃない。


私は私の好きにする。


でも、事務仕事漬けになった後のくたくたの私をベッドに戻してくれる時の婚約者はちょっとだけ好き。


果たして私は今多少なりとも救われているのか、地獄に向かって一直線なのかは定かではないが…自殺するよりはいいんじゃない?ということで。


それでももしどうしてもというのなら、婚約者くん。


無理矢理にでも私を救ってみせるくらいの気概を見せて欲しい。

神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました


という連載小説を掲載しております。完結済みです!よろしければご覧ください!


あと


【連載版】侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました


ちょっと歪んだ性格の領主様が子供を拾った結果


ショタっ子大好きな私が公爵令嬢に生まれ変わったので、ショタっ子の楽園のような孤児院を設立します。…え、淑女の中の淑女?だれが?


という連載も掲載しております!


よろしければお付き合いください!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 性格悪い歪んだ根底=家族への情を、以前の記憶で一度捨てたんだなと思いました。 主人公が諦めからの死に固執、ではなくて切り替えが出来る逃げる先を周囲が確保した柔軟性がギリギリあったのが良かっ…
[気になる点] >さすがに私がもらって大切にしていた亡き祖母の形見のブローチを妹に壊された時まで『お姉ちゃんなんだから許してあげなさい』はないです これ、爺ちゃんやその他家族(祖母の縁者)はブチギレ…
[一言] 婚約者が彼女をベットへ戻すのじゃなくて、彼女よりも婚約者の彼が、早く事務仕事をしちゃえばいいのでは? やるべき仕事が無きゃいいだけなんだから
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