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図書室。           13歳

最近はシトラー侯爵令嬢達のおかげで目立った嫌がらせは減った。


「カトリーヌ様そろそろわたしのことはセリーヌとお呼びください」


「わたしはリーズと」

横に居たリーズ・デューガン伯爵令嬢。


「あ、じゃあ俺はドーナル!」

ドーナル・マッカーシー伯爵令息。


三人は幼馴染でずっと仲良しらしい。


何故かペンキ事件以来気がつけばわたしは「ぼっち」を卒業した。


「ありがとうございます。セリーヌ様、そしてリーズ様、マッカーシー様」


「え?なんで俺だけ名前呼びじゃないの?」


「一応、わたし男子とはあまり仲良くならないように気をつけているので」


「あ、婚約者の手前?」


「ち・が・い・ま・す!よくわかんないんだけど話しかけてくれるのは男子ばかりだったの。女子からは何故か話しかけてもらえなくて……だから出来るだけ距離を空けるようにしているの」


「まぁ、その容姿だからね。女子は近くに寄りたくないと思うわ」


「何故?どうして?」


「だって横にいたら引き立て役になってしまうもの」


「え?何それ?」

わたしは口を尖らせてムスッとした。


「それに近づくなって空気を醸し出しているしね」


「そ、そう……」

ーーわたしそんなに近寄りがたかったのかな


少しショックを受けつつ下を向いていると


「カトリーヌ様は話すととっても可愛らしいのにね、特に食べている姿は子犬みたいで可愛もの」


「こ、子犬?」


「確かに!見かけは可愛いけど何しでかすかわからないものね」


「うん、この前いきなり中庭の木に登った時は驚いたよ」


「あ、あれは……木の上に仔猫が登って降りられなくなっていたから……」


「いや、あれは凄い。見かけは儚げで可愛いくせに動きは猿だった」

マッカーシー様は思い出し笑いをした。


「あら、じゃあ子犬じゃなく子猿?」

リーズ様がクスクス笑いながら言った。


「もう、なんでもいいわ」


「あの仔猫はどうされたの?」


「こっそり屋敷に連れて帰って今は料理長が飼ってくれているの」


「今度会いに行きたいわ」


「うーんそれはやめた方がいいかも……来てもいい気分はしないと思うわ」


わたしの言葉に三人は何か感じてくれたのかそれともわたしの噂を知っているのか……


「カトリーヌ様がお家を出たくなったらいつでもわたしの屋敷にきてください」

セリーヌ様が何も聞かずに言ってくれたので


「ありがとう、もしもの時はお願いしてもいいかしら?」

ちょっと本気で返してしまった。



ーーーーー


放課後いつものようにわたしが図書室へ行こうとしたら


「カトリーヌ嬢、俺も本を返しにいくから一緒に行こう」

マッカーシー様が追いかけてきた。


「わたしが返しておきましょうか?」


「いや、俺もジャンっていう子に会いたいんだ」


「ジャン様に?」


「うん、天才少年。ちょっと話してみたかったんだ」


「ジャン様はとってもいい子なの、クラスが違うからあまり関わりがないけどマッカーシー様が仲良くしてくれたら少しは彼の環境も良くなるかも」


マッカーシー様は誰とでも仲良く出来る。ジャンは年下ということと人と付き合うのが苦手ということでなかなかクラスに馴染めないみたい。


わたしと似ているのでお互い気が合う。マッカーシー様ならジャン様も心を開くかもしれない。


「ジャン様、遅くなってごめんなさい」


いつもの席で待っていてくれた。

約束をしているわけではないけど大体毎日同じ席に座る。

「カトリーヌ嬢、隣に座っても?」マッカーシー様がわたしの隣の席に座った。


「こちらマッカーシー様。最近話すようになった人なの」

ジャン様に紹介するとチラッと見てすぐに視線を逸らしペコっと頭を下げた。


「カトリーヌ嬢の中で俺はまだ友達ではないらしい……最近話をするようになったドーナル・マッカーシーです、君はジャン・マグワイアだよね?」


「……うん」


「ずっと気になってたんだ、君の論文を読んだ。9歳でどうしてあんなことを考えられるんだ?」


「あっ!『我が国の農業の実態と今後の対策について』だったかしら?」


「カトリーヌ嬢も読んだの?」


「うん、少しだけ。わたし農作物よりも食べることに興味があるからいかに安定して供給されるかに興味があったからそこだけ読んだの」


「ぷっ……」


「あはは、さすが見た目とギャップのあるカトリーヌ嬢!」


「そうかな?ジャン様はその年で凄いのよね?わたしはいつも歴史を教えてもらっていたからそっちしか興味がなかったけど、その頭の中身少しわたしにも分けてもらえないかしら?」


「俺も欲しいよ、でもそれを言うならカトリーヌ嬢だって凄いだろう?語学と数学はずば抜けているし」


「わたしの場合興味があることしか出来ないの。歴史はトラウマがあって苦手なんだ」


「トラウマ?」


「そう……歴史の先生がちょっとね……」


ーーふと思い出す。お父様が出て行ってすぐの頃。

家庭教師の先生が歴史を教えてくれて、すぐに覚えなさいと言われて必死で覚えた。

そしたらすぐにテストをされて一問でも間違えると見えない肩やお尻を鞭で叩く。

それが痛いし怖くて、必死で覚えようとするけど恐怖で萎縮して覚えていても答えられない。

するとまた叩かれる。叩かれると怖くて覚えられない。

その繰り返しで気がつけば歴史は苦手な教科になっていた。

そんな歴史を面白く教えてくれたのがジャン様だった。

図書室で必死にぶつぶつ言いながら覚えているのをたまたま見たジャン様が「この本なら覚えやすいと思います」と薦めてくれた。


そしたらいつもより頭に入ってきた。


それからはなんとなく話すようになって勉強を教えてもらっている。


ジャン様もわたしのトラウマの理由はもちろん知らない。


「カトリーヌ嬢はそう言う表情をすると庇護欲をそそられるんだよね。普段はとんでもないお転婆なのに」


「え?カトリーヌ様がお転婆?」


ジャン様がものすごく驚いていた。


「もう!言わないでもいいでしょう!」


「この前なんて凄かったんだ。女子がカトリーヌ嬢に意地悪で本を隠したらその女子達の鞄を次から次へと開けてガバーって逆さにして下に落としたんだ。

で、中から自分の教科書見つけてさ、

『あら、こんなところにあったのね』って言って落とした中身は無視して去って行ったんだ。その女子達は顔を真っ赤にして涙目になってたけど何にも言えなくて、震えてた。ほんと面白かったよ」

マッカーシー様は思い出し笑いをしていた。


ーーこんないい子のジャン様にくだらない事教えて!ほんとやめて欲しいわ



三人で話していると


「カトリーヌ」

低い声で不機嫌にわたしに話しかけてきたのはイーサン殿下だった。

今日も変わらず女の子の取り巻きと側近候補の男の子達と図書室にやってきた。


「イーサン殿下にご挨拶申し上げます」

わたしは全く心の籠もっていない形だけの挨拶をした。

学園内では王族に対して頭を下げることはあっても態々きちんと挨拶をしなくても良いのだが婚約解消を願うわたしは一線を引きたくて態と挨拶をしている。


「君が俺との婚約解消を願っているのはやはり男子と仲良く過ごしたいからなんだ」


ーーはい?この人馬鹿なの?いや馬鹿だった。


「…………」答える気にもならずに黙っていると


「今度のお茶会にはアーシャと行くことにした。君は好きにするといい」


と嬉しいことを言ってきた。


「わかりました!では喜んで欠席させていただきます」


わたしが嬉しそうに答えると、イーサン殿下は目を見開いてわたしを見ると、今度は睨んで


「……欠席は却下だ」

と言った。


「はあーーー……わかりました。仕方がないのでとりあえず出席します」


わたしの言葉にイーサン殿下はさらに不機嫌になり今日はもう図書室に用事はないのか去って行った。


「カトリーヌ嬢、あ、あれはダメな奴だよ」


「僕もそう思います」


「ダメな奴?イーサン殿下が?」


「君って案外鈍感なんだね」

マッカーシー様がわたしを見て苦笑いをしたけどわたしはイーサン殿下の態度にむかついてどうやってお茶会サボろうかと本気で考えていた。






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