お姉様
セリーヌ様の意識が戻ったと聞いたのは翌朝だった。
でも彼女はまだ私たちと会うことを拒否していた。
そして……イーサン殿下との婚約解消にあたり陛下との謁見があると言われた。
仮眠をとって昼からイーサン殿下と共にお会いすることになった。
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「お忙しいところ申し訳ございません」
「カトリーヌ、昨日は大変だったな。少しは気持ちも落ち着いたか?」
「はいありがとうございます。陛下、そしてイーサン殿下達の尽力のおかげで犯人達を捕まえることができたこと感謝致します」
「まだ取り調べが始まったばかりだ。セリーヌ嬢も意識を取り戻したと聞いておる。カトリーヌ今までご苦労だった。わたしはお前のその明るい性格と負けず嫌いなところ、そしてイーサンに対してもハッキリとモノを言えるところを気に入っていた。意地っ張りで甘え癖のあるイーサンをお前なら変えてくれると期待していた。それがこんな結果になってすまなかった。お前の身を危険に晒してしまったこと、もっと早くに解消していればと今更ながらだが詫びるしかない」
「わたしが記憶を失っている間、守って頂いていたこと感謝しかありません。確かに身の危険もありましたが王太子の婚約者であったからこそ「影」をつけていただけたし、常に脅威から守っていただいておりました。ありがとうございました」
ーージャン様に聞いた話だったけど、わたしがイーサン殿下の婚約者だから襲われていたわけではない。
お義兄様ももちろんだけど、わたしの髪の色はこの国ではとても珍しいらしく、幼女趣味の人たちからは喉から手が出るほど欲しいと思う人が多いと聞かされた。
それにわたしの容姿は可愛い……らしい。
なのでわたし自身に手を出したいと思う人や攫って売りたいと思う人もいたと聞かされた。
それもあり陛下は婚約解消をしないでわたしとイーサン殿下をずっと婚約させていたらしい。
もちろん陛下はわたしを娘のように可愛がってくれたことも一つだったし、両親から見向きもされないわたしを守るためでもあった。
両親からするとわたしがそんな身の危険があったなど思ってもいなかったのかもしれない。
わたしに興味すらない両親だから……
帰り際、イーサン殿下に話しかけられた。
「カトリーヌ、今までの態度、本当にすまなかった。まだ君に何かをしようとする者が現れるかもしれない。侯爵達にはしっかりと伝えてあるから護衛もしっかりとつけてくれると思う……俺が言うのもおかしいけど、幸せになって欲しい」
彼は泣きそうな顔で私を見つめていた。こんな悲しげな顔をする人じゃないはず。だっていつも不機嫌にわたしを睨んで口を開けば文句か悪口しか言わなかった。
わたしは裾をぎゅっと手で握りしめた。
「わたしもいつも意地ばかり張って言い返して……すみませんでした」
ーーでも本当は殿下との言い合いが楽しいと思っていた。わたしのことを正面から見てくれて馬鹿にしたり怒ったり、そんな人いなかった。
みんなわたしの容姿にしか興味がなくてわたしを見てくれる人なんて本当に何人かしかいなかった。
だけどもうこんな関係も今日で終わり。
「ありがとうございました」
わたしは頭を深々と下げて王宮を後にした。
ーーさよなら殿下。
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屋敷に帰るとお父様とお母様、そして泣き続けるお姉様がわたしを待っていた。
「カトリーヌ!!あなたはなんてことをしたの!わたしの夫を誘惑して!捕まってしまったのよ?」
わたしの顔を見た瞬間お姉様はわたしの頬を叩いた。
左頬は真っ赤に腫れ上がりわたしが手で押さえると、その手を払いのけられた。
「あなたの痛みなんてわたしの辛さに比べたら大したことではないわ」
お父様とお母様はお姉様を止めようとした。
「やめなさい、セシル」
「うるさいわね、お父様とお母様がさっさとカトリーヌを捨てないからいけないのよ!」
ーーえっ?捨てる?
「ピンク色の髪なんてこの国では珍しいと言われてみんなから好奇な目で見られて!お父様だってお母様が浮気したのではないかと疑心暗鬼になっていたでしょう?」
「お姉様、わたしの髪はお祖母様の遺伝だと聞いていますが……」
ーーあれはいつだったか……そんな話を聞いた気がする。
「そうよ、お祖母様はお母様が幼い頃亡くなったのよ。あなたと同じピンク色の髪の所為でね」
「………どう言うことですか?」
「聞いていないの?お祖母様はとても綺麗な人で男の人達からとても人気があったの。そして……襲われて自殺したの。だからお父様は知らなかったの。お祖母様のことは侯爵家の隠された秘密だったから……」
「すまない、カトリーヌ、お前はわたしの子ではないかもしれないと疑っていた」
「ごめんなさい、カトリーヌ。お母様のことは口外してはいけないことになっていたの。主人にはカトリーヌは祖母似なのとしか言わなかったから……わたしが浮気をして生まれた子だと思われていたの」
ーーわたしはここに戻って来てなんの話を聞かされているのだろう。
世間の噂で苦しんだことよりこの人達の話の方が心を抉られてしまう。




