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リクルーター  作者: 海星
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一話

 『適材適所』『世界旅行』これが僕に与えられたチートスキルだ。


 俺はお決まりの神様のミスによって突然死した。

 訳がわからない。

 寝て、起きたら突然天界にいたのだ。

 『申し訳なかった!』起きたら突然、土下座した女神が目の前にいたのだ。

 ここまではテンプレート通り。

 俺は『チートスキル』を得て、異世界に放り出される・・・と思った。

 『ん?異世界?

 行かなくて良いよ?

 行きたくないでしょ?』と女神。

 そりゃそうだ。

 誰が好き好んで文明の遅れた土地に行きたいモノか。

 『だいたい異世界に転移させるのなんて"異世界で何かやらせたい"からなのよ。

 私は貴方に"何かをやらせたい"なんて思ってないの。

 それどころか、今のところ上手く行ってる"異世界"にチートスキルを持った異分子を放り込みたくない。

 私が貴方にチートスキルを授けるのは純粋な"お詫びの気持ち"なのよ。

 だって貴方の肉体は既に火葬されて、埋葬されちゃってるし。

 勿論、貴方の魂が入る肉体は用意するわよ。

 こちらの不手際だしね。

 出来るだけ能力の高い、貴方が"見てくれが良い"と思う肉体にするわよ!』

 あんまり嬉しくないなー。

 ブサイクだって、身体能力が低かったって自分の肉体には愛着がある。

 『わかってるわよ。

 だからお詫びを兼ねて出来るだけ厚待遇にしようと思ってるんじゃないの。

 貴方が器として入る肉体の条件は

 ①容姿が良い事。

 ②身体能力が高い事。

 ③天涯孤独である事。

 ④意識不明である事。

 ⑤同じ年頃である事』

 コレ、かなり限られるんじゃないか?

 『器を探すのは私の役割よ。

 貴方に面倒はかけません』

 そりゃそうだろうけど、多くの中から優れた個体を選ぶんじゃなくて、下手したら該当の個体なんていないんじゃないの?

 『必ず日本人の中から条件に該当する個体を見つけます!』

 そうか。

 頑張ってね。

 探すのにどれくらい時間がかかるの?

 『わからない。

 でも貴方の体感時間で100万年経過していても、人間界の時間じゃ一秒も経過していないから。

 気長に待っててね』

 気長ったって肉体のない魂だけの存在で、暇をもて余すのは苦痛なんだけど。

 『寝て待ってれば良いわ』

 そうか、それじゃお言葉に甘えて眠らせてもらうよ。


 俺は深い眠りに落ちて行った。

 目を醒ます。

 数秒目を閉じていただけかも知れない。

 長い時間寝ていたのかも知れない。

 "眠り"なんてそんなもんだろう。

 俺は瞳を開ける。

 瞳?

 魂に瞳はない。

 口を開ける。

 口?

 どうやら俺は"器"とやらの中に既に入っているらしい。

 女神め。

 『この器で良いか?』

 ぐらいの了承は得ろよ。

 この肉体を俺が気に入らなかったらどうするつもりなんだよ?

 でももう交換返品は効かないらしい。

 そもそも肉体の"交換返品"が存在するかしないかなんて知らない。

 寝ぼけた俺が"もうこの肉体で良いよ"って言った可能性もある。


 俺はベッドに横たわっている。

 身体は思うように動かない。

 そりゃそうか。

 どれだけかはわからなかったけど、意識不明で寝たきりだったんだから。

 しばらくは指一本動かすのも一苦労だろう。

 視界に入るのは白い天井のみだ。


 しばらくするとドタドタと看護士がやってきた。

 何事かと思っていると、どうやら脳波の波形が意識のない者のモノじゃなかったらしい。

 看護士が俺を覗き込む。

 可愛い感じの女性だ。

 「やあ」と声をかけようとした。

 是非お近付きになりたい。

 彼氏はいるかも知れない。

 でも可愛い女の子は入院生活の彩りなりそうだ。

 しかし掠れた息が漏れただけで声は出なかった。

 看護士と目が合う。

 看護士がライトを俺の眼球に照射する。

 まぶしい。

 勘弁して欲しい。

 看護士が何か慌てている。

 「先生!?

 306号室へ来て下さい!

 身元不明、意識不明の患者さんが目を醒ましました!」

 看護士は電話機の様な何か、PHSだろうか?、を耳にあて叫んでいる。

 どうやら俺は身元不明らしい。

 そういえば『器の選定基準』に"天涯孤独である事"があったな。

 それにしても身元不明って事は名前も不明なのか。

 他の誰かの名前を呼ばれるより気楽か。

 俺の意識が入っている限り、元々の肉体の持ち主の意識が目覚める事はないはずだ。

 だって俺の記憶の中に他人の記憶なんてないんだもん。

 医師っぽいオッサンが来る。

 オッサンは俺の手を握る。

 「私の言う事がわかるのなら、指を動かして下さい」

 俺は指に力を込めて、オッサンの指を握り返・・・したつもりだった。

 しかし俺の指はピクリとしか動かない。

 しかしオッサンはとても驚いていた。

 「き、奇跡だ!」

 オッサンと看護士の話を聞いていると、脳死と認定された者が再び意識を取り戻す可能性は殆どない。

 俺が生命維持装置を付けられていたのは臓器として活用される予定だったからのようだ。

 臓器提供相手が見つかっていれば、この身体は・・・。

 どうもならないか。

 そうなったら女神が違う肉体を見つけてきたはずだ。


 とにかく俺は『脳死状態から目覚めた』らしい。

 しかしこの身体は本当に体力がない。

 そりゃ、今まで全く動かなかったんだから当たり前か。

 少し指を動かしただけでヘトヘトだ。

 俺は取り敢えず睡眠で体力を回復する事にした。


 そういえば女神が俺に"チートスキルを授ける"とか言ってたよな。

 『適材適所』と『世界旅行』だっけ?

 訳がわからん。

 ま、スキルより身体が動かせるようにならないと。


 普通意識はなくてもリハビリは行われるものらしい。

 目を醒ました時に関節を動かせるようにだ。

 それすらもしていなかった、という事は俺が目を醒ます可能性は全く考えていなかったのだろう。

 次の日から猛リハビリが始まった。

 首も動かせない俺は自分の姿も確認出来なかった。

 食事も鼻からチューブを入れて、胃の中まで流動食を流し込んだ。

 上手く話せないのはそのチューブのせいもあっただろう。

 先ず最初に指先が動かせるようになった。

 そして、肘がある程度動かせるようになった。

 次に首が動かせるようになって、上半身が起こせるようになった。

 この頃には簡単な言葉を発せれるようになった。


 最初の頃は「あれ?何か違うぞ?」といった漠然とした違和感だった。

 次に「もしかしたら・・・」と可能性に行き着いた。

 そして現在、確信に至る。

 「俺は女だ」と。

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