俺、いや…私は誰?
「キテ……起きて!!起きて!」
なんだ?誰かが叫んでいる。どうやら目が覚めたみたいだ。俺は死んでいなかった。
「良かった…生きてた、良かった。レイナ。」
…レイナ?誰のことだ?知らない女性がずっと俺に話しかけている。また夢かこれは?
しかも、ここは身に覚えの無い古いアパートの一室のような場所。どんよりとした空気で身体が重い様な。
「レイナ…もしかして私のこと分からない?何も覚えてない?」
混乱して黙り込んでいる俺の様子を見て女性は不安そうにしている。それにしても、綺麗な人だな。俺よりは歳上だろうが…。
「あの、自分には何が起こったのかが分からないのですが…あなたは誰ですか?助けてくれた方ですか?」
「…っ。」
女性は開いた口が塞がらない様子で、どこかに電話した。
その間に重い体を起こし、一息ついた。
あれ?俺の足こんな綺麗だったっけ?どう見ても男の俺の足とは言えない。女の子の足だ。手も、肌も、何もかも俺じゃない。
もしかして、もしかすると、本当に女の子になってる?だけど、あの女の人俺の事レイナって呼んでたよな…。もしかしてレイナっていう女の子に俺の魂が乗り移ったのか?…いや、さすがに夢だろう。なかなか目覚めないなんて俺も疲労が溜まってたんだな…。
「車に乗って。病院に行くから。」
女の人に連れられ、車に乗った。この人はこの子の母親なんだろうか?
ぶっちゃけ困惑して俺も不安だけど、せっかく女の子になったんだから目が覚めるまで女の子を堪能しよう。
窓に反射した自分を見てみると、普通の女の子っていう感じ。特別すごく可愛い訳でもないが、まぁ電車に居たら目につくくらいには可愛いかな。高校生くらいかな?本当は今すぐにでも自分の身体を観察したいところだが…。
病院に着き、医者からこう言われた。
「レイナさんは自殺未遂をし、命に別状は無いですが記憶障害を起こしています。この後遺症は今日治るかもしれないし、1年後に治るかもしれない。記憶が戻るまで、普通に生活を送るしかありません。」
おぉ。なんか、よくある流れだな。記憶喪失ってやつか。この子がどんな子か知らないが、中身はおっさんです。…なんてね。
レイナの母親らしき女性は涙をこぼしながら頷いた。
まぁ無理もないよな。我が娘が自殺未遂までして、挙句の果てにいつ治るか分からない記憶障害なんて。どんだけ複雑設定なんだよ、この夢は。