表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【総合ページ】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~  作者: Bonzaebon
はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【 第4章 沈黙の魔王と白い巨塔】 第1幕 異界塔士Ro・Ar
997/1094

第323話 破壊の女神カア・リィ


「さあ、戻ってらっしゃい。あなたが見てきた情報を全部を見せて頂戴。」



 突然の事態に俺は呆気にとられた。アカが、今まで一緒に塔の中を戦い抜いてきた仲間が魔王と一体化していく。正に悪夢だ。このまま為すすべなく仲間がいなくなってしまう様をただ見ているだけしかなかった。



「ホホホ、これで私の勝利は盤石なものになった。勇者ロア、覚悟なさい。」


「そのまえにアカがお前の一部っていうのはどういうことだ? 今まで俺と行動してきたアイツは紛れもなく一人の人間だった! そんなのありえねえよ!」


「そう見えたでしょうね? 確かにこの子は実在した人間だもの。かつて異国で魔人と恐れられ神として崇められる程にまでなった三姉妹の一人だったのよ。」



 実在というか、アカは元々この偽りの世界の住人ではなく、現実にいた女性がモデルになっていたのか。確かにパッチラーノとは違う意味で異質さを感じさせられる背景にはそんな事実が隠されていたとは……。



「確かにいた事は間違いないのか?」


「三姉妹の長姉が復讐を遂げるためにさらなる強さを求め、妹たちと融合することを考えた。その末路がこの姿、破壊の女神カア・リィというわけ。」


「わざわざ手の込んだマネをするな? アンタ、蛇の魔王なんだろ? 前に会ったときみたいに人間の姿を借りて出てくるのはどういう訳だ? コソコソしてないで本当の姿を見せてみろよ!」


「あら、あの時の事を憶えてくれていたのね? うれしいわ。あなた、並外れたお馬鹿さんだから忘れられていると思って、敢えて名乗らなかったのだけれどね? あなたの言うとおり、私は蛇の魔王シャロット・アランよ。」



 蛇の魔王! 忘れもしない! かつてエルの心の傷に付け入り、彼女の叔母に取り付いて散々苦しめた張本人だ! 他にもクーザー・ブレイドを破壊したり、ミヤコを陥れようと暗躍していた事も知っている。今までは俺の周囲の人間を陥れる活動をしていたようだが、今度は俺自身を狙ってきたというわけだ。



「本当に憎たらしいのよ、あなたは。いつもいつも私の計画を邪魔してくれる。あまりにも煩わしいからあなたを先に始末することを考えたのよ。」


「よく言うぜ。エルやミヤコを弄んで苦しめてきたクセに! 絶対に許さないぞ!」


「馬鹿言わないでほしいわ。私があの娘の体を手に入れようと苦心してきたというのに邪魔をして! あの娘さえ手に入れてしまえば、四天王、いえ、その頂点にいるキングさえも目じゃないというのに!」



 ”あの娘”というのはおそらくエルのことだ。彼女の心の傷を広げて、闇を吹き込み意のままに操ろうとしていた。元より俺には関心がなく、エルを付け狙っているという感じはした。ただ邪魔をしてくるから仕方なく倒すという風に感じられたのだ。コイツにとって勇者打倒は二の次になっているのでは、と。



「何の話をしているんだ? エルをどうしようって言うんだ?」


「全魔王の中でも序列が中位程度である私がトップに躍り出るために必要な手段、それが”受肉”して完全体になることなのよ。」


「”受肉”だって? なんだそりゃ?」


「旦那、要するに、魂を入れるための器としての肉体を手に入れるってことだぜ。」



 エルを、エルの体を乗っ取ろうと考えていただなんて! なんてことを企んでいたんだ! それが彼女に執着していた理由か? 手に入れるとは文字通り、自分の体を手に入れることだったとは! でもなんでだ? 魔王は自分に都合のいい体くらいいくらでも生成できるのでは? 何故そんなに生きている人間にこだわる必要があるのか?



「なんでエルにこだわるんだ? 他にも都合のいい体はあるんじゃないのか?」


「あの娘は特別なのよ。私達魔王にとっては最高の依代。闇の力に適合した体、血筋。あの娘はかつての”大魔王”を輩出した由緒正しき血筋の生まれなのよ。」


「ヤツの言うとおり、大魔王と同じ血を引いてるってこった。ある意味、大魔王の生まれ変わり、大魔王になる素質を持ってたってことさ。」



 エルの血筋が大魔王の血筋だなんて初めて聞いた。魔術師の名家だとは知っているが、由来はそんなところにあったのか。口ぶりからすると子孫というわけではなさそうだが、大魔王となった人間を輩出したとなれば一族の名声に傷が付くのは目に見えている。教団から糾弾される可能性もある。そういう理由もあって秘匿されていたのかもしれない。



「ただ普通に育たれては適合しない。だから私はあの娘の母親から目をつけていたのよ。母親エルフリーデにデーモン・コアの欠片を植え付ければ、生まれてくる子はより一層、闇の力が濃縮されて受け継がれる。そこから育つ段階で心に闇を持つように仕向けていけば……いずれは大魔王として開花する素体が出来上がるという寸法よ!」


「お前、よくも二人の人生を弄びやがって!」


「全ては私の計画の内。エルフリーデが魔王討伐隊の一員になることを仕向け、金剛石の王を操り、牛の魔王をそそのかせた。やましい心を持つものは誰であろうと闇の力に引き寄せられる。魔が差す、とはよく言ったものね? そんな者を操るのは容易いわ。」


「てめえ、絶対に許さないぞ!!」


「馬鹿おっしゃい! 許さないのは私の方よ! あなたが全てを台無しにした! あなたがあの娘の中で育ちつつあったコアを破壊してしまったから、変質してしまったのよ!」



 全てはこの蛇の魔王の企みだったとは! エルとその母を陥れ、自らの力にするために行動していたんだ! コイツはどうあっても俺が倒さないといけない! 不幸の連鎖をここで終わりにするんだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ