ダメだコリャ!
ダンジョンに入り、しばらくして、通路の先に大きな部屋らしき空間があるのが見えてきた。
「おっ!?なんかあるんじゃない?」
テンションが上がった俺は思わず小走りした。早く先を確かめたい。先にあるのはお宝か?それとも罠か、魔物か?
「いけないでヤスよ!こういうときは罠の確認を怠ってはいけないでヤスよ!」
犬の人は大部屋の入り口までソロリ、ソロリと足音を立てずにゆっくり近づいていく。
「ここでストップ!入る前に左右をしっかり確認するでヤス!」
犬の人はゆっくり頭だけ出して、左右を確認した。
「絶対、“角待ち”には警戒するでヤス!しないと背後からブスリとやられるでヤス!」
後ろから刺されるって、何?それ罠なの?人に刺されるって解釈でいいのかな?
「こうやって確認してから入るでヤスよ!」
そうかっこよく言ってから、部屋の中にピョンと飛び込んだ。その着地と同時に何か「カチッ」という音が聞こえたような気がした。
「左右確認は基本でヤスよ!」
その声と同時に犬の人の頭上に何かが落下してきた。
(ゴバーン!!)
「アウチ!?」
「な、なんか、落ちてきた!?」
その飛来した何かは金だらいのようだった。あくまで教習用のダンジョンだから死なない程度の罠だったのか。
「ちょっと!罠にかかってるんだけど?」
金だらいの直撃を受けた犬の人はその衝撃から、少し目が回っている様子だった。
「こ、こんなものはどうということは…ないでヤンス!むしろ、ダンジョンの恐ろしさをわかってもらうためにわざと…かかったでヤンス!」
犬の人はふらつきながら、部屋の先の通路へと向かっていった。明らかにワザとじゃないな。コレ、絶対油断してただろ!
「これに懲りずに先を行くでヤンスよ!」
犬の人は通路の手前で振り返り、仁王立ちを決めた。なに、格好付けてんだか……。そのとき、またアノ音がなった。
(カチッ!……ヒュン!……バシッ!!)
「キャイン!?」
今度は木の棒が犬の人に命中した。犬も歩けば棒に当たるとかいうことわざがあったような気がする。再現度ハンパねえ!もうホントにこれじゃ、完全にただの犬じゃねえか。
「ボウケンシャーたるもの、如何なるときでも油断は大敵でヤンスよ!」
「エエェ……。」
まるっきり説得力がなかった。もはや、一番悪い例を見てしまった。……ダメダコリャ!