イザユケー、ボウケンシャ―!
「さあ、着いたでヤス!」
俺たちは教習用ダンジョンとやらにやってきた。では、張り切って行くか!
「チョット待つでヤス!」
入ろうとしたところを急に呼び止められる。威勢は良かったのに、ガーンだな。出鼻をくじかれた。
「何か気になるものはないでヤスか?」
「気になるもの?」
俺は周りを見渡してみた。でも、気になるものは何もない。
「勇者様、上を見て下さい。」
エルちゃんがヒソヒソ声で俺に話しかけてきた。上を見る?
「何か書いてある!えっと……、糸は……?」
入り口の上の方にある看板には「糸は持ったか?」と書いてあった。糸?ダンジョンで糸なんか使うの?
「糸は大事でヤスよ!命綱でヤスよ。必ず持って行くでヤスよ。今日はあっしが持ってるでヤス!」
「元来た道を辿るための目印に使うそうですよ。」
「ああ、そうなんだ?」
糸を垂らしながら進んで、道に迷ったら糸を辿って戻るということか?なるほど!考えた人は頭がいいな!
「じゃあ、改めて……、」
「スターーップ!まだでヤス!糸以外にも必要な物があるでヤス!」
まだ、なんかあるのか?まいったな。また、出鼻をくじかれたな。アチャー。
「これでヤス!」
犬の人は一枚の紙を取り出した。その紙にはなにかマス目のようなものがビッシリ書かれている。
「コレ何?」
「ダンジョンと言えば、マッピングでヤス!地図を書きながら進むんでヤス!」
地図?こういう紙に書いていくのか?それなら何も書いてない紙の方がいいんじゃないのか?
「それって、マス目ない方がよくない?」
犬の人は「チッチッチッ!」と人差し指を立てて左右に振った。
「甘いでヤスよ!マップ作成には方眼紙を使うのが鉄則で、伝統なんでヤスよ!」
「なんじゃそりゃ!?」
変な伝統だな?建物みたいに紙の形に合ったダンジョンならいいけど、洞窟みたいな構造の場所とかどうするんだ?そんなマップを書く側の都合にいいダンジョンばっかりなはずがない。
「とにかく、マップは手書きが一番でヤスよ。常識なんでヤス!」
いや、手書きしかなくない?他にも手段があるんだろうか?
「もう入ってもいいですか?」
「じゃあ、行きヤスよ!」
入り口でえらくもたついてしまったが、ようやくスタートだ。