第292話 ”様”を付けろよ、このデコ助がぁ!!
「な、ナニコレ? 何もかも壊され尽くしてるじゃないか!」
雲の世界から戻り塔の探索を再開した俺達だったが、再びある階で足止めをくうことになった。激しくなる魔物の襲来をアカと二人で切り抜けた先で待っていたのは、形をかえた新たな災難だった。扉の先は廃墟ばかりが広がる、既に滅んだ世界だった。
「うん? これはおそらく人が作ったものだ。材質はわからないが、建物の一部だったんだろうか?」
そこらにある残骸《※コンクリート》を拾い上げて観察してみる。俺は最初、石だと思って見てみたら、不自然なくらい形が整っている。陶器の様に粘土を成形して焼き上げた物とは何か質感も違っている。
「なんだか見たことのない素材だね? 金属だと思ったら陶器? どうやって作ったものか、アタイには想像がつかないよ。」
金属みたく型とかに流し込んで固めたみたいな作りだ。奇妙なことに同じ材質の残骸を見てみると、細い金属の骨格のようなものが突き出している物《※鉄筋コンクリート》もある。骨組みのある石? どうやって作ったのか、ちんぷんかんぷんになってわからない。未知の技術が使われている。
「何か得体のしれない文明が存在していたのかもしれないね。ほら、よくあるじゃないか? 古代の伝説とかでよくある、超文明が大きな災害で滅んだとかいう話が。」
「痕跡もわからないくらいに無茶苦茶になったから、本当にあったかどうかもわからないやつね? 伝説とか言い伝えは残ってるのに、場所が特定できないみたいな?」
地震とかで崩れたとかなら見つかるかもしれんけど、海の底に沈んだとか、星が落ちてきて跡形もなく吹き飛んだとかいう伝説もあるしな。昔話とかでも快楽に溺れすぎた人たちが神の天罰で一夜にして滅ぼされたとかいうのも聞いたことがある。他に、大洪水になって全部滅んだけど、神様の言付け通りにデカイ船作って難を逃れた男の話とか……ってそれはちょっと話が違うか。
「ここの人がどうなったのかはわからないけど、アタイ達には関係のない話さ。ここにもいるはず。主と呼ばれる魔物が。」
「うん、まあ、滅ぼした奴がそうなのかもしれんし……!?」
俺は異変に気付いた。太陽に照らされ、ジリジリと焼かれる様な日差しを感じていたが、たった今それが消失した。いきなり日陰に入ったような? おまけに風も強い! 辺りに遮蔽物もなく、雲ひとつない空ではありえない現象だった。影の形がやけに動いているような? 俺はふと真上を見上げてみた!
「な!? デカイ鳥がいる!!」
「コイツはこの世界の主かい!?」
「鳥とは失礼な呼び方をしおって! ファイ・バードと言うれっきとした名があるわ!!」
正にデカイ鳥! それが俺達の頭上にいきなり現れ、翼をはためかせ滞空している。見た目は赤色を基調としてカラフルな羽で全身が覆われている。コレは俺の祖国の伝説に出てくる、鳳凰とか朱雀と同じ見た目をしている! でも今、ファイ・バードとか名乗ったよな?
「ファイ・バード? じゃあ、やっぱ鳥じゃん?」
「鳥ではない! そんじょそこらの鳥と一緒にしてくれるな! それにオレの名を呼ぶときは”様”を付けろよ、このデコ助がぁ!!」
「デカイ・トリ様?」
「ちがーう!!」
別にいいじゃない、それで? 名前からして、ネーミングセンスも大差ないじゃない?何よ、ファイ・バードって? もしかして炎みたいに真っ赤だからファイヤー・バードをモジッただけなんじゃ? というか最近似たような名前のやつがいたような? なんか、俺とファルちゃんの新技の犠牲になったやつが? 誰だっけ? まあいいや。
「じゃあ、ファイ様?」
「省略するな!! ちゃんとフルネームで呼べ!!!」
「デカイ・トリ・ファイ・バード様!!」
「デカイ鳥と呼ぶなぁ!!!!」
何なんだよ、コイツは。出るなりちょっといじってやったくらいでキレやがって。まるでトサカが付いてるのはキレやすいキャラなんですよとアピールのために付いているかの様に思えてくる。
「じゃあ、ファイバ様は何のためにおいでになったんですかね?」
「こ、コラ! 適当な略称にするんじゃない! それはともかく、愚かな挑戦者共に制裁を加えてやるためよ!!」
「挑戦者? 挑戦した憶えはありませんが?」
「ここにいるということはそういうことであろうが! それ以前にお前はオレに不敬を働いているからどの道八つ裂きになる運命なのだ!!」
「そりゃ大変だ!」
「なんか他人事みたいに聞こえるのは気の所為か? 立場をわかってるのかぁ!!」
なんか早朝にコケコッコって泣きわめくニワトリと同じじゃないか。だからトサカが付いてるんだろう。もうなんかデカイニワトリみたいに見えてきた。さっさと倒して焼き鳥にして喰ってやろうか?
「ハッ!!」
(ガギっ!!!)
どうしてやろうかと思っていた矢先に、アカが攻撃を仕掛けた。高い跳躍と共に斧を振り下ろしたが何か不自然な現象が発生した。鈍い音と共にアカの攻撃が弾かれたのである!
「な、なんだいコレは?」
「いきなり攻撃するとは不届きな奴め! だが、オレに攻撃は効かん!!」
なんだコレ? アカの渾身の一撃が効かない? 馬鹿な? よく見れば、トリ様の体に何かオーラの様な物が立ち込めている。これは結界とかバリアみたいな物なのだろうか? でも心配ない。俺にそんな物が通用すると思ったら大間違いだ!




