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【総合ページ】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~  作者: Bonzaebon
はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【 第4章 沈黙の魔王と白い巨塔】 第1幕 異界塔士Ro・Ar
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第284話 能ある馬は馬脚を出さず……?


「旦那が悪いんですぜ。わざわざ、あっしがそうなるように仕向けてたのに。お膳立てを全部ひっくり返されたら、商売あがったりですわ。」



 パッチラーノは明らかにがっかりとした様子で渋々と戦闘態勢を整えている。ここまでの旅の中で初めて見せた本気の戦闘態勢に見えた。大盾と長槍を構える姿は様になっている。まるで別人みたいだ。



「や、やめろよ。俺達は味方じゃないか?」


「味方? 味方になったつもりは最初からありやせんぜ。あくまで目的、利害が一致してただけでさぁ。」



 今までは協力関係で問題なかったと言いたいのか? でも、今は? 俺のしたことが、アカを助け、虎の魔王を倒したってのが都合が悪い? 何が悪いんだ? 今までは仲間が次々といなくなって後味の悪さしか感じなかったんだが……。



「台無しなんでさぁ。旦那の行いが、偽善がすべての妨げになるんだってことですわ。」


「俺の行いが……間違っているのか?」


「間違ってるっすよ。少なくとも、この場所に於いてはね。」


「ゴメン。俺が悪かった。お前の意図も汲み取れずに俺は間違った行動をしてしまった。」


「誤って済む問題だと思ったら大間違いですぜ。それは甘ちゃんの言う典型例ですぜ。結果として、台無しになった。どうやって取り戻すか? それはこういうことでさぁ!」



 視界に飛び込んできたのは槍の切っ先! 俺の顔面を狙っている! 瞬時に剣で打ち払い、その攻撃をやり過ごす。俺はヤツの行動を止めようとしたが、相手はお構いなしに次の行動に移っていた。目の前には大盾の紋様が迫っている! 盾を使った体当たりだ!



(ドゴァッ!!!!)



 俺はまともに盾の激突を喰らってしまった! 鼻っ柱に強い衝撃を受け、一瞬視界が真っ白になり、体も後ろに吹っ飛ばされた。すぐに体勢を立て直そうとするが、まだ頭がくらくらする。ヤツの迫る気配がするが、容易にはいかない。



「ボサボサしてると一瞬で死んでしまいますぜ! 虎野郎とやり合った元気はどこへいってしまったんですかい?」



 パッチラーノは執拗に攻撃を繰り出してくる。ここまで出し惜しみをしていたのが不思議なくらいの槍の使い手だ。片手で槍さばきを見せながら、大盾での攻撃を不意に使ってくる。堅実な責め方だし、これほどプレッシャーを感じる相手なんてなかなかいない。



「くっ! ここまで強いなら、俺達と組まずにソロでも十分戦えたんじゃないか?」


「実力ってのは出し惜しみするもんでさぁ。『能ある馬は馬脚を出さず』ってよく言うもんですぜ。」


「聞いたことがないよ、そんな格言!」



 とにかくコイツは強い! 圧倒的に力や体格で優れる魔物や魔王たちよりもよっぽど隙が少ない。全て自分の武器を強みを活かした攻めに徹底し、自信過剰に力押ししてこないということもあり、付け入る隙がないのだ。



「旦那? あんまり達人のような技を身に着けてる感じはしないのに随分と慎重な戦いぶりっすね? 勘だけはいいというか、あっしの狙いを無意識に防いでいる。」


「自分ではよくわからないよ。何とか必死に戦っているだけだから!」


「必死ねぇ? そんな素人じみたセリフは勇者には似合いませんぜ!」



 確かに勇者としては失格かもしれない。普通は戦闘センスなんて余裕で持ち合わせている人間がなるもんだ。俺はそこが違う。たまたまその場に居合わせていたから受け継いだに過ぎないんだ。第一、破門された人間がなっていいものじゃない。



「どことなく自信なさげな態度は洗浄ではご法度ですぜ!!」



 槍の攻撃を凌いでいたところに大盾の一撃、このタイミングではどうしても喰らってしまう! どうしようもないと、思った瞬間、手にしていた剣を取り落し、義手の拳を大盾に渾身の力で叩きつけていた!



(バギャン!!!!!)


「義手で対抗しようってか? いい根性ですぜ! だけど反対側はがら空きですぜぇ!!」


(ズンッ!!!)



 剣は取り落してしまっている。なら、残っているのは左手のみ! 手の平で槍の切っ先を受け止める! 当然、槍に貫かれ大きな怪我を負ってしまった。痛い。だがコレしか方法がなかったんだ。



「おうおう! 痛々しい防御法だな、オイ! これじゃ、ますます旦那の勝ち目はなくなった!」


(ミシミシっ!!!!)


「……!? 何の音だ? ハハッ、どうせ義手が砕けた……!?」


(バキバキ……メシャっ!!!!!)


「ご、ごぶえっ!?」



 義手は盾を粉砕したに留まらず、その先にあるパッチラーノの顔面をも粉砕していた! ティンロンと戦った時に繰り出した|伸びるパンチ《義手によるアーム・パンチ》が命中していたのだ。とっさに避けたためか真正面からは逸れているものの、顔面の右側が陥没しかねない程のダメージを与えていた!



「ぱ、パンチごとき、しかも大盾を砕くほどの威力があるだと! やってくれるぜ!!」



 パッチラーノは受けた衝撃で折れたらしい奥歯を俺の顔面に吐き捨て、その隙きに俺の左手に刺さっていた槍を強引に引き抜いた! 荒々しい。何かさっきまでのヘラヘラした態度は嘘のように消えていた。まるで狂犬、とも取れるような激しい性格に変貌していた。



「やってくれたな、勇者! 今のは俺様でもちょっとばかし堪えたぜ! ボスの言いつけは破ることになるが、火が付いちまったからには収まらねぇ! もう演技は止めた。こっからはマジになるぜ、覚悟しな!!」



 パッチラーノは性格を豹変させ、槍を自由自在に振り回し、そのスピードを早めていった! その度に槍の穂先にには炎が纏わり付いていった! 先ほどとは比較にならないほどの凄まじい槍さばきだ!



「死にたくなきゃ、死ぬ気で来な! じゃねえと、消し炭になった上で粉々の灰になっちまうぞ!! 獄炎龍・炎舞殺(ヴァルカン・レイヴ)!!!!」



 奴の操る槍はまるで炎を纏った龍に変貌していた! アレはただの槍じゃない! 多節棍のように鎖でつなぎ合わせた仕掛け槍だ! この圧倒的な技の前に俺は呆然とするしかなかった……。

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