シェフを呼んでくれい!
「ふむ、見事な料理じゃったな。事が済んだらまた来るとしよう。」
「おいしかったです!ごちそうさまでした。」
私たちはフル・コースを存分に楽しんだ。途中から勇者様への罪悪感が薄れてしまうくらい。……ごめんなさい、勇者様。おいしい料理の誘惑には勝てませんでした……。
(パチン!)
サヨさんはお店の人を呼ぶために優雅に指を鳴らした!なんだか、かっこいい!私もこういうことしてみたい。
「すまんが、シェフを呼んでくれんか?一言、挨拶しておきたい。」
「はっ。少々、お待ち下さい。」
お店の人は恭しく礼をして、シェフを呼びに行った。どんな人が出てくるんだろう。
「それにしても、エル坊よ。そなたは彼奴のことをどう思うおるのじゃ?」
「……え?だ、誰のことでしょうか?」
突然、問いかけられた言葉に私は動揺した。そんなこと聞かれると思ってなかった……。どうしよう!
「何をとぼけておるのじゃ。妾が彼奴と言えば、ロアしかおらんじゃろう?」
サヨさん、すごいニヤニヤしてる!意地悪だなあ。
「素敵だと思います。……色々、助けて頂きましたし。助けてもらわなかったら、今、この場にいなかったと思います。」
「ほほーう?ホントにそれだけかのう?」
言われて顔がどんどん熱くなってきてる。もう、どうしたらいいんだろう……。
「ああーん?なんとか申してみよ!ホレホレ!」
「サヨ様。本日もご来店ありがとうございます。」
私のピンチを見かねたのかな?シェフの人がすごくいいタイミングでやってきた。助かりました。ありがとう!
「おお!今日も料理は素晴らしかったぞ!また腕を上げたのではないか?」
「お褒めに与り、光栄です。」
それから二人は料理について話し始めた。イベルゴンがどうとか、ベシャメルがなんだとか。専門用語ばっかりで全くついて行けません!
「……お客様、困ります。」
「いやいや、俺の連れがここに来てるはずなんだけど?」
お店の入り口のほうから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。もしかして……?