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第229話 チャーハンの人。


「ああーーっ!? やっと思い出したアル! この人、いっつもチャーハン作ってた人アルよ!!」


「どうしたの、チャン・リン・シャン? あのアホな勇者に見覚えが?」


「え? なになに? 俺のこと?」



 ゲンコツのオッチャンと会話を進めていた所に、突拍子もないキンキンした声を張り上げる少女がいた。ティンロンの妹、シャンリンである。となりにプリメーラもいる。人のこと突然指差したと思ったら俺をチャーハン男呼ばわりである。一体何の事を言っているのか? 思い出したって何?



「兄上が追いかけ回してる人の事、何も知らなかったアルけど、時々見かけてたの思い出したアルよ!」


「所詮、ヤツはモブ! 忘れ去られる定めにあったのよ!!」


「いっつも梁山泊の厨房でまかない作ってた人アル! たまに私もおいしそうな匂いに惹かれて思わずふらっと立ち寄ってしまってたアルよ! ちょいと摘むつもりがついついお腹いっぱい食べてしまってたアル。でもコレは内緒の話ね。言ったら父上に叱られてしまうアルよ!」



 なんか思い当たる事が……。たまに”チャーハンが足りなくなる事件”が勃発していたのは宗家のお嬢に原因があったのか? なんかなくなるときに限って、あまり見かけない娘がウロウロしているな、と思っていたら、つまみ食いされていたらしい。


 でも現場を目撃していなかったので、犯人である確証もなかったし、そんなお上品な娘がオトコの飯なんか食べるはずがないと思っていた。そして今、その犯人が判明したのである。本人のカミングアウトによって……。



「よその人から無闇に食べ物貰っちゃダメ! 拾い食いも厳禁! お腹壊したり、人さらいにさらわれちゃうからね!」


「貰ってもいないし、拾ってもいないアルよ! だから、無問題(モウマンタイ)!! ちょっと味見をしただけアルよ。」


「馬鹿なっ!? あんなアホが作った物がそこまでの魅力があるとは思えない! なんかヤバイ薬でも盛られたなんじゃないの?」



 横からプリメーラがあることないこと言っている。お嬢が俺の料理に魅了された事が許せないのだろうか? でも説得力がない。この街に来るまでの道中で俺の作った物を過剰摂取していたクセに!アレが薬の効果だというのなら、お前はとっくに重度の中毒患者(ジャンキー)じゃないか!



「でも、あの人はスゴイあるよ。ウチの雇われ厨師の作ったチャーハンよりよっぽど美味しかったアル。多分、その気になったら特級厨師になれるはずアルよ!」


「いやでも、作れる料理が偏ってるから無理だよ。そんなん特級厨師だなんて恐れ多いよ。」


「いや、そんな事ないアル! だって、アナタ、料理の精霊を味方につけてるから、料理の天才になれるはずアルよ!」


「料理の精霊……?」



 なんか不思議ちゃん的な発言が始まったぞ? 料理の精霊って何? 聞いたことなんだけど? なんか味付けのセンスとか、奇抜な料理のアイデアを授けてくれるとかそんな存在でもいるんだろうか? ホントにいるんなら味方につけたいな。



「そこにいるのは”チャーシューの精霊”に違いないアルよ!」


「ゲゲッ!? あの人ってオークじゃなくて精霊だったの? ところでちゃーしゅーって何?」


「嬢ちゃん、もしかして、ワシの事言うてる? ところでちゃーしゅーってなんやねん?」



 突然何言い出すんだこの娘は! 完全にゲンコツのオッチャンを豚扱い! しかも美味しそう的な発言をしてしまっている! でもチャーシューという単語を知らないため、意味は通じていないようだが……。当然、プリメーラも何のことかピンと来ていないようだ。



「私、豚肉は大好きアルよ! 焼豚(チャーシュー)とか酢豚とか東坡肉(とんぽーろー)好きアルよ! 私も精霊さんのご利益にあやかりたいアル!」


「こ、コラッ! オッチャンに失礼だろ! オッチャンに対して”豚”はNGワードだぞ!」


「うはは! かまへん、かまへん! おもろいやんけ! ワシのこと豚肉の精霊やなんて、おいしいいじり方されたんや! 嬢ちゃんにナイスボケのポイントを贈呈したるわ。」



 オッチャンは懐から取り出した何かをお嬢に渡した。その正体は……なんか豚の鼻を象った小さなバッジだった。なんか土産物屋とか聖歌隊が売り出しているご利益グッズみたいなヤツ。いつの間にあんな物を作ったんだろう?


「コレを10個集めたら殿堂入り、トップ賞が貰えるで。」


「ホントあるか? やったあ!!」


「いいなぁ、うらやましい!」



 なんか”ガツ盛”のポイントカードみたいなシステムだな? 貯まるとタダ券一枚貰えます的な。しかし、貯まったとしても、どこに持っていけば景品に交換して貰えるんだろう? 謎は深まるばかりだ。


「チャーハンの人を思い出したところで、アナタに言っておきたいことがあるアルよ。」


「え? 何? 俺になんか用?」


「そのうち、最強の剣覇決定戦を行いたいアルよ! 父上倒したいうことは相当強いに違いないアル!」


「決定戦? いやいや、そんなん、必要ないから! 俺はハグレもんの落ちこぼれの、クソザコナメクジだから、倒す価値ないよ?」


「ぜひ、兄上をとっちめた技の数々を見てみたいアル。私はそれを学んでもっと強くならないといけないある。兄上は無理に決まってるし、フェイも何かよからぬ事を企んでるあるから、私が梁山泊を継がないと多分おかしくなるアルよ。そのため、日々勉強が肝心ある!」



 兄や戟覇を差し置いて宗家に? しかも野望とかじゃなくて、二人に任せたらおかしくなるかもしれないから自分が継ぎたいと? やれやれ……こんな成人したての女の子に将来を心配されるなんてな。なんか意外と将来大物に成長するかもしれないな。

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