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黒の兵団の掟~タクティクス№0~

「ぐ……、うう……、」



 ……私は一体?……そうだ!私は魔王に体を貫かれ重傷を負い、不覚にも意識を失っていたようだ。



「イグレス様!意識が戻ったのですか?」



 地面に横たわった自分の傍らにはクロエがいた。回復魔法を使って私を死の淵から呼び戻してくれたのだろう。



「申し訳ありません!治療に専念したいのはやまやまですが……、」


「構わんよ。私は兼々君にはデーモンの殲滅を優先するよう教示しているからな。」


「タクティクス№0、仲間の命よりもデーモンの殲滅を優先せよ、ですね?」


「その通りだ。よくわかっているではないか。それを実践してくれればいい。」



 負傷した私はただの足手まといに過ぎない。彼女の力ならば、例え重傷であっても治療することは出来る。だが、今の状況下においてはそれは難しい。魔法力にも限界はある。敵を倒すことに残りの力を注がねば勝つのは困難だろう。



「死ぬ覚悟はできた?じゃあ、みんな仲良く殺してあげるね!」



 魔王は手に魔力を収束し始めている。今までとは比べものにはならないほどに強い力を感じる。魔王の様子を見たクロエが私の盾になるかの様に、前へ進み出た。



「神よ、我に力をお貸し下さい。全力を持って邪なる者を完全に消し去らんが為に……、」



 グローイング・パルバライザーか!彼女の持つ最高の秘術だ。詠唱の言葉通り全力で魔王を仕留めるつもりだ。あまりに強力なため自身の消耗も激しい。一歩間違えば自分も命を落としかねない魔法だ!



「へえ、まだそんな力が残ってるんだ!……じゃあ、私もちょっと本気を出そうかな!」



 何を言っているんだ?まだこの期に及んで、本気を出していなかったというのか!完全に我々は遊ばれているといことか。



「ヤロウ!ふざけやがって!」



 ウネグとジェイがクロエの秘術の時間稼ぎをするために、魔王へと飛びかかっていく。それと同時に魔王の体に異変が起き始めた。体格が大きくなり、体中に獣毛が生え、頭部には角が生え始めた。



「雑魚が出しゃばるんじゃないわよ!」



 今まで少女の姿をしていたとは思えないくらい、異様に筋肉質になった豪腕を振りかざした。そのままかかってきたジェイを吹き飛ばした。その間、ウネグの矢が命中しているものの、そのまま矢が瞬時に腐り果てていた!



「もう遅い!今更何したって無駄よ!」



 戦いながらも、体の変容を続けている!遂には背中から翼が生え、ウネグをその羽ばたきで吹き飛ばした。



「馬鹿な!これでは全く手に負えんではないか!」



 歴戦の傭兵をいとも簡単にあしらっていた。……せめて、私の傷が深くなければ、こんな真似などさせないのだが……。本当に口惜しい!



「ワタクシにお任せ下さい!イグレス様!この一撃を以て、必ず倒して見せます!」



 彼女の秘術は完成を迎えていた。後は狙いを定めて放つだけだろう。彼女の実力を疑っているわけではないが、通じるのだろうか?今の魔王に……?



「閃・消・滅……絶!!」



 らせん状に練られた光条が束になって、魔王目掛けて飛んでいく。対する魔王はさすがに身構えている。



「やるじゃない!そうこなくちゃ、楽しくないよね!」



 魔王は黒い障壁を前面に展開し、防ごうとしている。抜けるのか?この悪夢の障壁を!



(バチィィィ!!!)



 正と負のエネルギーがぶつかり合い、激しく音が鳴り響く。こうも激しいぶつかり合いは今まで見たことがない!



「貫!……突!!」



 悪夢の障壁に阻まれた光弾に、クロエは更なる力を加えていた。頼む、彼女の力よ届いてくれ!



「うう……、思ってたより強い!何よこれ!」



 あまりの力に魔王がうろたえている!障壁には次第に亀裂が生じ始めている。



(バキィィィッッ!!!)



 抜けたか!障壁は砕け、霧散した。もう、光弾を阻む物は何もない!



「うわああああっっ!!」



 光弾は魔王に命中し、それと同時に爆発を起こした。魔王を中心に辺り一帯がまばゆい光に包まれる。



「やったのか?」



 光に視界を奪われたままのため、それが確認できない。だが、そうであって欲しい。クロエが全力を以て放った一撃なのだから。



「……!?馬鹿な!!」



 閃光は次第に収まり、魔王が姿を現した。光弾が炸裂する前の姿を保っている!全く効かなかったというのか!



「残念だったね!ちょっと焦ったけど、なんともなかったよ!」



 手傷さえ負わせることは敵わなかった。途方もない強さだ。



「ご……めん…なさい。エ…ド……。ワ…タクシの力…は……および…ませんでした。」



 力を使い果たしたクロエはその場に崩れ落ちるかのように倒れた。思わず私は彼女の元へ駆け寄った。



「良くやった、クロエ!後は私に任せてくれ!」


「無理よね!そんなんじゃ、あなたたちに勝ち目なんて、ひとつもないんだからね!……!?」


(パキィッ!!)



 そのとき、何かが折れる音が鳴り響いた。思わず魔王の方を見てみれば、二本ある角の片方が根元から折れているではないか!



「なっ……!?角を折られてた?」


「無傷……というわけではなかったようだな!クロエの全力の一撃だ。くらっておいてただでは済むまいよ。」


「ふん!こ、こんなの擦り傷程度にもならないんだから!」



 明らかに魔王は動揺している。手傷を負わせることはできなかったとしても、精神的にはダメージを負わせることはできたのだ!



「もういい!これで終わりだからね!さっさとみんな仲良く死んじゃいなさい!」


「エド……、あなただけでも……いい…から、逃げて……。」



 このままでは終わらせはしないさ!クロエの働きを無駄にするわけにはいかない!私の意地を何が何でも通させて貰う!


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