次なる敵は……、
「大丈夫か?クロエ。」
「ええ。おかげさまで回復できましたわ。」
魔王と相対しているうちに彼女には自身の回復を促していた。十分に回復の時間は稼げたようだ。彼女の顔色も随分と良くなっている。
「旦那、お次はどうします?」
ウネグ、ジェイの二人は無傷というわけではないものの、戦闘の継続には問題無さそうだった。いずれも歴戦の猛者たちだ。多少の傷はどうということはない。
「勇者殿に加勢せねばならんな。おそらく屍霊術師と交戦しているはずだ。」
魔王との交戦までは会話を交わしていたのだが、途中で屍霊術師が割って入ってくる気配は感じていた。あの男はどうやら勇者殿に執着しているようだ。
「賢者さんはどこかニャ?姿が見えないニャ?」
賢者殿もいつの間にか姿を消している。同時に魔女の姿もない。どこかで交戦していると見て間違いなさそうだ。
「賢者殿に助けは不要だろう。我々ではかえって足手まといになるだろう。」
賢者殿の実力は計り知れないが、あの魔女からもそれに匹敵する気配を感じた。両者共に人知を超越した存在なのは間違いない。
「旦那、あのヤロウ、大分追い詰められているみたいですぜ。」
「どうやらそのようだ。早くせねば、勇者殿が危ない。」
勇者殿は砦の端の方まで追い詰められていた。
アンデッド戦士二人を同時に相手している。それでも持ちこたえているのは凄いというほかない。私と交戦したときは本気を出していなかったのではないかとも思う。
「勇者様、かわいそう。だって、ほったらかしにされているんだもんね?」
馬鹿な!止めを刺したはず!何故動ける?
(ドシュッ!)
「イ、イグレス様ぁ!!」
「ば、馬鹿な!?」
反応が遅れた。それは致命的だった。背中から胴体を貫かれた。間違いなく魔王の仕業だろう。
「倒したと思った?残念でした!こんな簡単に引っかかってくれるなんてね。案外、詰めが甘いのね?黒騎士さん?」
確かにとどめの一撃の後は黒い気配は消えていた。死をも欺くとは、今までのデーモンにはこちらを欺くほどの狡猾さは備えていなかった。さすがは魔王。力だけではなく狡猾さも備えているのか。
「でも、さっきのは痛かったよ。ホントに死んじゃいそうなくらい。だから同じぐらい、痛い目にあわせてあげたの!死なない程度にね!」
殺せはするが、敢えてそうしなかったのか。残虐さも一級だな……。いかん、意識が……、