見取り図を囲みながら。クセすご……くない。
「ふむ、隠し通路か。悪くない。」
一旦、町へと退却した、妾たち一行は一晩の休息の後、対策会議を行っていた。ロアの奴と……デーモン・コアの持ち主たる、あの娘の捜索を行わねばならなかった。一刻も早く、あの屍霊術師よりも先に二人の身柄を確保せねばならない。
「この資料の通り、あの砦には脱出用の隠し通路が存在する。この通路を使えば、崖下のエリアにアクセスすることが容易になる。」
捜索をするに当たり、奴ら二人が落下した地点に到達するには、地形的に困難であり、かなりの時間を要する。そこで、砦の古い資料を探し出し、隠し通路の存在を確認したのだ。
「ふむ、やはり、この道を使うのが現実的じゃろうな。……聞くまでもないとは思うが、この案に異論がある者はおらぬな?」
相づちを打ったり、立ち上がり準備運動の素振りを見せたりするなど、各々、個性的な反応を示している。だが、そのいずれもが肯定を示しているのは明白だった。このことについては問題なかろう。問題は……、
「エドワードよ、そなたに確かめておきたい事がある。」
「確かめたい事とは?」
「そなたはあの娘の処遇については、どう考えておるのじゃ?」
「処遇ですかな?」
この男の鉄仮面の上からでは何の感情も読み取れない。
「そんな事を私に聞くのですか?愚問にも程がありますぞ、賢者殿?」
「愚問であったか?それは済まなかった。だが、それでもそなたの考えを確認しておきたかった。」
「例えどんな相手であろうと、デーモンであれば処遇は変わりませんよ。」
その時、鉄仮面の上からでも激しい憎悪の高ぶりが感じられた。
「悪・即・斬、私の意志は決して揺らぐ事はない。……もし、あるとすれば、この世からデーモンが消え失せた時でしょうな。その時まで、決して手を止めない、手を汚すことに躊躇う事などありませんよ。」
「そうか。……これは可能性の話じゃが、ロアの奴があの娘をかばう様なことをすれば、どうするつもりじゃ?」
「無論、その時は例え勇者であろうと私は斬り捨てる。例え、貴殿に非難されようと私の意志は変わらない。」
一言一句、躊躇いが感じられない。この男は本気で言っている。
「私はデーモンにとってのデーモンであることをモットーとして活動している。例え冥府魔道に墜ちようと、我が道を突き進むのみだ。」
「どのような事があろうと、意志は変わらぬのじゃな。」
一体何が、この男をここまで突き動かすのだろうか?だが、そんなことを詮索するのは藪蛇だろう。決して、触れてはならないものであることは感じ取れた。